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AI業界は一晩で情報が古くなる? DeepSeekとo3-miniの最新動向を比較

先週の金曜日(2025年1月31日)に「DeepSeekを使ってみた」という記事を公開しました。しかし、翌日(2025年2月1日)にはChatGPTのアップデートが発表され、新たな動きが話題になりました。記事の内容が完全に古くなったわけではありませんが、AI技術の進展が想像以上に早いことを改めて実感する出来事でした。。

今回のアップデートでは、新モデル「o3-mini」が発表されました。そこで、本記事では、新モードである「o3-mini」と「DeepSeek」を新規事業関係の質問で比較し、違いを解説していきたいと思います。

1.変化の速さ:金曜日の最新情報が土曜日には古くなる世界

AI業界の進化のスピードは驚異的で、1日で状況が一変することも珍しくありません

この変化の背景には、技術革新の速さだけでなく、各国の企業や政府がAIの主導権を握るために熾烈な競争を繰り広げていることが挙げられます。

中国は自国の規制の枠組みの中で独自の言語モデルを強化し、「DeepSeek」のような高性能なモデルをリリースすることで、欧米のAI市場に対抗しようとしています。一方で、アメリカはOpenAIを中心に商業利用を加速させつつ、政府レベルでのAI規制を模索しており、軍事・経済分野での活用が今後の焦点となるでしょう。さらに、EUはAIの倫理規制を重視し、企業の責任を強化しながらも、独自の技術開発を進める方向性を打ち出しています。

こうした国際的な競争の中で、AIモデルは次々と改良され、**「より速く、より賢く」**進化を続けています。企業や開発者は、AIを活用する上で単に新技術を導入するだけでなく、その背景にある国家間の競争や規制の動向を理解しながら、活用していくことが求められます。

2.OpenAI「o3-mini」「o3-mini-high」の登場

「o3-mini」は、OpenAIが発表した軽量AIモデルで、従来の「GPT-4」よりコンパクトながら高速で低コストの運用が可能です。計算コストの増加が課題となる中、処理の軽量化と高応答速度を両立する目的で開発されました。

特にSTEM分野(科学・技術・工学・数学)に特化し、プログラミングや数理解析の精度が向上。従来の「o1-mini」より24%高速で、応答時間は平均7.7秒。3段階の推論レベルを選択でき、タスクに応じた調整が可能です。**関数呼び出し(Function Calling)や構造化出力(Structured Outputs)**に対応し、開発者向けの柔軟性が向上。インターネット検索機能も統合され、最新情報を提供可能になっています。

また、「o3-mini」は従来モデルよりトークン数が削減され、より効率的な処理が可能になっています。トークン数が減るメリットとして、①計算負荷の軽減による処理速度向上②API利用時のコスト削減③同じコンテキストウィンドウ内でより多くの情報を保持できる(長い会話を記憶しやすい)といった点が挙げられます。特に、APIを利用する開発者にとってはコスト最適化が重要な要素となります。

ChatGPTのPlus、Team、Proプランの有料ユーザーが利用でき、無料ユーザーも「Reason」選択で試用可能。APIユーザー向けの最適化オプションも提供されています。

3. DeepSeekとChatGPT新モデルを比較してみた

3-1:「DeepSeek」と「ChatGPT」完全比較:新規事業

「o3-mini」「o3-mini-high」「DeepSeek」「DeepSeek deepthink」に対し、

「新規EV(電気自動車)ブランドが日本市場で5年以内に獲得可能な市場シェアを推定してください。」

という同じ質問を投げかけてみました。

「o3-mini」は、新規EVブランドの市場シェアを推定する際、数秒で結果を算出し、1~3%の範囲を示しました。市場環境や政府施策、消費者動向を分析し、各シナリオにおいて論理的な推定を行うのが特徴です。また、競争環境や政策の影響を考慮し、明確な数値とともに推定市場シェアを提供します。

「o3-mini-high」は、より詳細な市場分析を行い、複数の成長シナリオを提示しました。低成長シナリオでは、新規ブランドの認知度の低さや販売網の未整備が影響し、1%未満の市場シェアにとどまる可能性が示されました。一方、中間成長シナリオでは、独自の技術や政府の支援が追い風となり、1~3%の市場シェア獲得の可能性が示唆されています。

「DeepSeek」は、定性的な分析を重視し、市場環境や競争要因を広範囲に整理しました。消費者のEVに対する認識や政府の政策を考慮し、市場全体の成長要因を評価しました。シェア推定値として2~3%を示したものの、技術革新や政策の影響を強く重視する点が特徴的です。

「DeepSeek DeepThink」は、さらに高度な市場予測と意思決定支援に特化しており、長期的な市場動向を深く分析しました。新規EVブランドの市場シェア推定においては、楽観、保守、悲観の3つのシナリオを示し、各シナリオにおける競争環境や政策の影響を詳細に解析しました。特に、新技術の導入や政府の支援策の拡充が市場成長に及ぼす影響を重点的に評価し、シェアの変動要因を細かく分析しています。

※画像を拡大/別ページで表示してご覧ください

3-2.比較をして-特徴早見表

項目o3-minio3-mini-highDeepSeekDeepSeek
DeepThink
o1-pro
回答の速さ非常に速いやや早い非常に速いやや遅い非常に遅い
回答の網羅性幅広い情報を網羅詳細かつ深い情報を提供実務的で簡潔やや遅い非常に遅い
具体的な洞察包括的だが浅い洞察が中心論理的で深い洞察を提供仮説検証や迅速な改善に強み論理的で非常に深い洞察を提供論理的で深い洞察を提供
用途ざっくりとした情報収集・戦略立案に最適長期的な戦略や重要な意思決定に適している実務的なアクションプランの作成に適している長期的な戦略や重要な意思決定に最適長期的な戦略や重要な意思決定に適している
金額Plus、Team、Proプランの有料ユーザー(月額20ドル~)Plus、Team、Proプランの有料ユーザー(月額20ドル~)無料無料高額(月額200ドル)

比較から得られる結論

今回の比較を通じて、「DeepSeek」は無料で利用できる点が大きな特徴である一方で、出力言語のばらつきや精度の不安定さといった発展途上の課題が見受けられました。それでも、既存の無料AIチャットでは得られなかった高精度な回答を提供できるため、特に一般ユーザーにとってAIを活用する入口としての価値が高いと私は考えます。金銭的な負担がないことで心理的なハードルが下がり、次世代産業の担い手である学生をはじめ、多くの人がAIに触れる機会を持つことが。これにより、新たなAIビジネスの創出やAIリテラシーの向上が促進される可能性があります。

一方で、「o3-mini」は処理速度の向上とコスト効率の最適化を実現しており、特にSTEM分野において実用的な選択肢としての優位性が明確になりました。特に、API連携を活用するLMS(学習管理システム)において、トークンコストが大きな課題となっていましたが、「o3-mini」の導入によりこのコストが削減され、産業利用がさらに加速することが期待されます。AIの活用範囲が拡がることで、教育やビジネスの分野においてもより多様な形でのAI活用が進んでいくでしょう。

4.今後の展望

今回のアップデートを経て、AI業界の進化のスピードを改めて体感すると共に最新情報を追い続けることの重要性を痛感します。 直近では更に、ChatGPTとGoogle Geminiの双方にアップデートが実施されました。ChatGPTの「o1-pro」には**「詳細なリサーチ」ボタンが、一方、Google Geminiでは「Gemini Advanced」に「Flash」「Flash-Lite」「Gemini 2.0 Pro」**の3つの新モードがそれぞれ導入されています。

この急速な変化の一因として、DeepSeekの影響があると私は考えます。 DeepSeekが無料で提供され、しかも高度な推論能力を持つことで、AI市場全体の競争が加速している可能性があります。特に「DeepSeek deepthink」の登場は、OpenAIやGoogleを含む競合他社にとって無視できない動きとなり、結果として各社が頻繁なアップデートを余儀なくされているのかもしれません。実際に、ChatGPTの「o1-pro」やGemini Advancedの新モード導入など、最新AIツールの機能追加が相次いでいる状況は、DeepSeekの台頭による競争激化の影響とも言えるでしょう

DeepSeekを使ってみた」同様、繰り返しになりますが、AI業界は単なる技術競争にとどまらず、経済や政治にも大きな影響を与える存在となっています。今後、AI技術の発展がさらに加速する中で、私たちが重要視すべきことは、「どのツールが自分にとって最適なのか」を見極め、適切に活用することです。新規事業の立ち上げ、技術開発、政治・経済動向の分析など、用途に応じて最適なAIモデルを選択することが求められます。また、AIが持つ情報の信頼性や、国家間の技術競争の影響を踏まえたうえで、どのモデルが今後の主流となるのかを注視することも重要です。

「DeepSeek」「o3-mini」ともに、今後のアップデートによるさらなる性能向上が期待される中、AI技術が社会や市場にどのような影響を与えていくのかを見極めていく必要があります。これからもAI業界の進化に伴う新たな動向を追いながら、個々人がそれぞれのモデルの活用方法を模索し、AI技術を最適に活用するための知識を深めていくことが求められるでしょう。