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新規事業を加速させるのか?DeepSeekを使ってみた【ChatGPTとも比較】
ここ数日、AI業界を賑わせている話題のサービス「DeepSeek」。本記事では、「DeepSeek」の革新性と課題を包括的に解説し、実際に使用したレビューを交えてその可能性を探ります。
目次
1.「DeepSeek」特徴と課題
中国発のAIスタートアップとして、文章生成や画像生成の両分野で成果を上げており、その動向は世界中のビジネスパーソンや技術者から高い関心を集めています。低コストで高性能なAIモデルを提供することで、競争が激化している市場の中で異彩を放っているのも一因でしょう。
一方で、「DeepSeek」を巡って批判的な意見も存在します。例えば、中国発のサービスであることから、データセキュリティやプライバシーに関する懸念が指摘されています。また、一部の国では、政治的な内容やセンシティブな情報について制限がかかる可能性があると報じられています。
各種メディアに記載されている「DeepSeek」の特徴と課題をまとめてみました。
【特徴】
・高性能と低コスト
・技術革新の促進
・多様なビジネスシーンでの活用
・オープンソースモデルの提供
【課題】
・検閲の問題
・プライバシー懸念
・技術流出のリスク
・知的財産権侵害の疑義
早速この特徴と課題の真偽を確認してみましょう。
2. 「DeepSeek」を使ってみたレビュー
「DeepSeek」を実際に使用し、ビジネスシーンや個人利用での可能性と課題を検証しました。
2-1:ビジネスシーンでの活用
A社とのミーティングで活用することで、「DeepSeek」の高い利便性と無料版でありながら十分な機能を実感しました。リアルタイムでの情報収集が可能であり、特に「ディープシンクボタン」を使うことで、短時間で具体的な回答を得られる点が大きな利点です。この機能により、ミーティング中に出た専門的な質問にも迅速に対応でき、議論がスムーズに進行しました。また、議事録作成や提案資料の準備においても、「DeepSeek」は高い効率を発揮し、短時間で高品質な成果物を作成することができました。無料でこれだけの性能を発揮する点は、非常に魅力的であり、特にリソースの限られた中小企業や個人にとって大きな助けになるでしょう。
2-2:個人利用で「中国と台湾の関係性」を試してみた所感
一方で、「DeepSeek」を個人利用として試した際には、いくつかの課題が浮き彫りになりました。特に「中国と台湾の関係性」などの政治的なトピックに関する質問では、情報が制限されるケースが多く、中国の情報統制の影響を強く感じました。また、AIの思考プロセスを一部可視化する機能は興味深いものの、中国語で表示されることが多く、日本語ユーザーにとっては使い勝手が限定的でした。さらに、無料版では画像読み込み機能が弱いため、詳細な視覚情報が必要な場合には他のツールを併用する必要があると感じました。これらの課題を踏まえると、利用目的や場面に応じた適切な活用が求められます。
3.ChatGPTと比較してみた
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3.1:同じ質問を聞いてみる
「DeepSeek」と「ChatGPT」に対し、「新規事業のステップと重要ポイントを教えてください」という質問を投げかけました。
「ChatGPT」は全体的に包括的な回答を提供し、8つのステップとそれに対応する詳細なポイントを示しました。これには、アイデア創出、ビジネスモデル設計、市場リサーチ、資金調達、サービス開発、マーケティング、事業拡大、そして収益化までの一連のプロセスが含まれており、それぞれのステップでの重要なポイントを具体的に説明してくれました。
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一方、「DeepSeek」はより簡潔で6つのステップにまとめられた回答を提供しました。回答の中で特に目立つのは「仮説検証」に関する強調で、迅速なフィードバックを基に改善を繰り返すアプローチを前面に押し出している点です。また、全体的にビジネス実務での実用性に焦点を当てた具体的な提案が目立ちました。
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3.2:「DeepSeek」と「ChatGPT」完全比較
「DeepSeek」と「ChatGPT」に対し、**「新規事業のステップと重要ポイントを教えてください」**という同じ質問を投げかけた結果、両者のモードごとの特性と適用範囲が明確になりました。それぞれの特徴を以下のように整理しました。
ChatGPT-4.0
**「スピードと網羅性」**に優れ、短時間で包括的な情報を提供します。このモードでは、新規事業のアイデア創出から収益化までの8つのステップを明確にし、それぞれのステップでの重要なポイントを網羅的に説明しました。たとえば、「アイデア創出」では「顧客ニーズを正確に把握する重要性」が述べられ、「市場リサーチ」では「MVP(最小限のプロトタイプ)を迅速に投入してフィードバックを得る」という具体的なアプローチが示されました。これにより、幅広いテーマを全体的に把握したい利用者に最適な選択肢であることが分かります。
DeepSeek
**「通常モード」は、短時間で具体的かつ簡潔な回答を提供する点が特徴です。このモードでは、6つのステップに絞り込まれた回答が示され、特に「仮説検証」のステップが強調されています。この仮説検証では、迅速なフィードバックをもとにプロセスを改善していくアプローチが提案されており、実務的な行動を重視する利用者にとって有用です。また、「DeepThinkボタン」**を使用することで、より深く熟考された回答が得られるため、さらなる具体性を求める場面でも活用が可能です。
ChatGPT-01 Pro
「深い考察と高精度な回答」に特化したモードです。このモードでは**、回答までの時間はかかるものの、回答の精度と深みはトップクラス**です。たとえば、「収益化」のステップでは、持続可能な収益モデルの詳細な構築方法や長期的な戦略までを提示します。このため、時間をかけてじっくり考察したい場合や、高い精度が求められるケースに適しています。
モードごとの特性比較
項目 | ChatGPT-4.0 | DeepSeek(通常モード&DeepThink) | ChatGPT-01 Pro |
---|---|---|---|
回答の速さ | 非常に速い(リアルタイム性重視) | 通常モード:速い DeepThink:やや速い | 遅い(熟考に時間を要する) |
回答の網羅性 | 幅広い情報を網羅(8ステップ対応) | 実務的で簡潔(6ステップに集約) | 詳細かつ深い情報を提供 |
具体的な洞察 | 包括的だが浅い洞察が中心 | 仮説検証や迅速な改善に強み | 論理的で深い洞察を提供 |
用途 | ざっくりとした情報収集・戦略立案に最適 | 実務的なアクションプランの作成に適している | 長期的な戦略や重要な意思決定に適している |
コストパフォーマンス | 有料(月額20ドル) | 無料(DeepThink含む) | 高額(月額200ドル) |
比較から得られる結論
これらのモードごとの違いを踏まえると、利用者の目的やニーズに応じた適切な使い分けが重要です。「ChatGPT-4.0」はスピードと網羅性を重視する利用者に適しており、ざっくりとした情報収集や初期のアイデア出しに向いています。一方、「DeepSeek」は迅速性と実務性を兼ね備えた無料ツールとして、短時間での仮説検証や行動計画作成に最適です。そして、「ChatGPT-01 Pro」は時間をかけた高精度な考察が必要な場面で最大の効果を発揮します。
ただし、現状「DeepSeek」は日本に関連する知識や文化的な理解が限定的であることや、誤った入力に対する柔軟性が不足している点が課題として挙げられます。また、「DeepSeek」の「DeepThinkボタン」は無料で熟考された回答を提供するという独自性を持っていますが、回答が中国語で表示される場合が多く、日本語ユーザーにはハードルが高い場面もあります。このように、両者はそれぞれの強みと課題を持つため、利用者は目的や状況に応じて賢く使い分けることが求められます。
4.所見
「DeepSeek」の登場は、AI業界全体に波紋を広げていますが、まずは使ってみることが大切だと思います。私は使ってみて国の思惑が反映されているように思いました。このサービスは単なる技術革新にとどまらず、メディアや市場での注目を集め、さらに競合他社との技術論争やNVIDIA株価の変動など、幅広い影響をもたらしています。
特に興味深いのは、「DeepSeek」のリリース時期と国際的な政治・経済情勢との関係です。このAIがアプリランキングで1位を獲得した背景には、中国政府の戦略的な意図が見え隠れします。トランプ大統領は「競合が生まれ、競争が活発になるのは良いことだ」と余裕を見せましたが、一方で、現場のAI研究者たちは異なる見解を示しています。彼らは「自分たちの技術を巧妙に盗まれ、それを基に開発された」との懸念を表明しており、これが単なる市場競争ではなく、知的財産を巡る攻防でもあることを示唆しています。
さらに、NVIDIAの株価に与えた影響も見逃せません。AI分野での競争が激化する中、NVIDIAの一強体制が揺らぐ可能性があることは、業界全体にとって大きな変化を示唆しています。これらの状況は、AI技術がもはや単なる商業的ツールではなく、国際関係や地政学的な要素にも絡んでいることを浮き彫りにしています。
「DeepSeek」の今後の動向を注視し、メディアや政治を理解しつつ、自身で使ってでしか得られないものがあると思います。個人的な肌感としては月20ドルのChatGPT-4oと月200ドルのChatGPT-o1proの間に無料で使える「DeepSeek」が位置づけられます。このツールが技術や市場にどのような影響を与えるのか、またどのように課題を克服していくのかが、今後のAI業界の行方を左右する重要な要素となるでしょう。