イントレプレナー塾
【新規事業成功への第一歩】アートとサイエンスが融合したビジネスプランをつくるには?
ビジネスの世界において、理論と実践、感性と論理が同居するのは珍しいことではありません。
特に企業内新規事業を考える際、感性的な「アート」と論理的な「サイエンス」は、どちらも成功には欠かせない要素となっています。
この2つの要素を適切に組み合わせることで、決裁者を惹きつける力を持ちつつも、実現可能性のある強固なプランを作り上げることができるのです。
しかし新規事業担当になったばかりの方が、事業プランを考える際に、はじめから双方を意識するのは簡単ではありません。
では、「アート」と「サイエンス」をどのように組み合わせたらよいのか、そのコツを探っていきましょう。
目次
「アート」と「サイエンス」をつなぐコツ
精度の高いビジネスプランは、人を惹きつける「アート」の側面と、事業収支の核となる「サイエンス」の側面のバランスが取れています。
「アート」とは直感や感性そして共感といった心を動かす要因を指し、「サイエンス」とは数値や分析など論理的な要因に根ざしています。
- 「アート」の要素のみだと:『おもしろそうだけど、儲かるの?』
- 「サイエンス」の要素のみだと:『理屈はいいけど、何がスゴイの?』
と言われてしまうからです。
この2つの要素を兼ね備えたビジネスプランを考えるのは難しいですが、解消する‘コツ’があります。
次にアートとサイエンスをつないで考える3つの思考パターンをご紹介します。
1.「定性情報」と「定量情報」を説明/言語化する
「定性」は主観的な情報や感覚を指し、一方「定量」は数値やデータによって示される情報を指します。
つまり、「定性=アート」「定量=サイエンス」と言えるでしょう。
これらを適切に組み合わせることで、情熱と論理が調和したビジネスプランを作成することができます。
アートの要素を持つ定性と、サイエンスの要素を持つ定量を組み合わせ、しっかりと説明ができるよう言語化しましょう。
自身のビジネスプランを振り返りやすくし、精度を上げることが可能になります。
2.プランの骨子は「アート」で組み立てる
定量的に組み立てられたプランは環境変化に弱い半面、定性的な大儀やビジョンはぶれにくいため、サービスの価値や思いを定義するときはアートを意識しましょう。
- ・顧客が製品やサービスに対して持っている感情や直感、意見を理解し分析すること
- ・顧客やチームメイトに対して、自身の思いや目指す方向、価値観を示すこと
などはアートを意識することで、顧客やチームメイト、もちろん決裁者の心を動かし、魅力あるビジネスプランということを伝えることが可能になります。
3.プランの最も大事なところは「サイエンス」で示す
ビジネスプランを組み立てる際に、売上とコスト構造を考えることや、ニーズ分析などは必須な項目です。主観的なアートではなく客観的なサイエンスで示しましょう。
- ・利益を最大化するための戦略を立てる、売上コスト構造の検証
- ・顧客の感想や意見を数値やデータに変換し分析すること
などをサイエンスで示すことで、精度が高く、説得力のあるビジネスプランに仕上げることができます。
事業を立ち上げた後に事故が起きないよう、特に収益に関する点は、感覚的にこなさないよう注意しましょう。
であれば、アートとサイエンスの両軸をそれぞれ強化するために、私たちはどのようなことをすれば良いのでしょうか。
1.アート:未来のプレスリリースを書いてみる
共感やフォロワーを増やすためのアートの側面を強くするためにはどうしたらいいのでしょうか。
一つのフレームワークとして多くの企業でも採用されている「未来のプレスリリース」をご紹介します。
皆さんが考えているプランで設定した目標が達成され、日経ビジネスのようなメディアに取材されている未来をありありと想像してください。
まず、事業案の目標が実現している、未来のある時点をゴールとして記しましょう。
そして、「その製品は顧客にとって、なぜ重要なのか。」「顧客体験は、どのように向上したのか。」「顧客は、新しいサービスの何を気に入るのか。」を説明してみてください。
その上で、大胆かつ明確なゴールを設定し、財務・経営・マーケットシェアなどの成果を、あたかも実際に未来で見てきたかのように記してみましょう。
最後に、克服しなければならない困難な課題、重大な意思決定のポイント、成功要因となったことといった事業計画のロードマップを書き出し、明確にしましょう。
「未来のプレスリリース」を作成することで、担当者自身は、事業の詳細な進め方を明確にできるでしょう。同時に提示された決裁者は、想像しやすく提案を受け入れやすくなるという利点が得られるのです。
2.サイエンス:「数字」や「財務」というワードに慣れる
サイエンスの側面を強くするためには、具体的な事業収支を押さえておくことが重要です。
多くの方が苦手意識を持ちやすい、「数字」や「財務」というワードに臆せず、慣れていきましょう。
どうしても苦手意識を持ってしまう場合は、社内の財務経理担当などの専門家の力を借りてもよいでしょう。
より具体的な数字は事業案をより現実的にするうえで欠かせない要素です。
損益分岐点や固定費・変動費、減価償却費など「数字」の項目や意味を知り、PLとキャッシュフローの「財務」の特性をつかみましょう。
すると事業案の組み立てはさらにスムーズになっていきます。
実はプランに必要な数字は、担当者として‘’辻褄’の確認と自らの‘’意思’の見える化をするためのもので、そこに難しい方程式など必要なく四則演算がほとんどです。
もしもそれで説明できない場合は、逆に注意が必要です。
計画が複雑化しすぎていたり、チームを引っ張って行く要素の解像度が低い恐れがあります。
まずは計算に間違いがなく、桁があっていることと情報をざっくりつかんだ状態を目指し、精度アップは企業の持つ人材の力を借りると割り切って慣れていきましょう。
3.フィードバックを活用する
プランを作成した後に、プラン立案に携わっていない人からフィードバックを受けることは、計画の質を向上させる上で非常に重要なプロセスです。
さらに、フィードバックを受けて修正を行うプロセスを何度も繰り返すことで、プランはより精度が高く、実現可能なものとなります。
1回目で完璧なビジネスプランを作成できることはありません。
何度も検証を回し、修正を重ねていくことが成功のカギとなります。
ではアートとサイエンスについて、どんな点に注力したフィードバックをもらったらよいのでしょうか。
アートの側面について
ビジネスプランが人々の感情や直感にどのように刺さるかが重要です。
顧客やステークホルダーの共感を得られそうか、感動や興奮を与えられそうかなどを見てもらいましょう。
アートの側面からのフィードバックを受けることで、プランの魅力や説得力を高めることができます。
サイエンスの側面について
計画が論理的でデータに基づき、わかりやすく表現されているかが重要です。
計画の収益予測やコスト計算が正確か、リスクが適切に考えられているかなどを見てもらいましょう。
サイエンスの側面からのフィードバックを受けることで、計画性や実行可能性を高めることができます。
さらに、「コスト構造を積み上げ式で考えるパターン」と「目標設定をしブレイクダウンで考えるパターン」の両方を取り入れて検討することも大切です。
どちらかで検討し満足するのではなく、両方の考え方を取り入れ、それぞれのコストを詳細に把握しましょう。
フィードバックを受ける際は、アートとサイエンスの両方の側面からの意見を平等に受け入れ、バランスよくプランをブラッシュアップしていくことが重要です。
結果として、より柔軟で信頼性の高いプランとなり、事業の成功へ大いに近づくはずです。
まとめ:アートとサイエンスを活用し新規事業を成功へ
新規事業の成功は、感性を刺激するアートと合理的なサイエンスの適切な組み合わせによってもたらされます。
ビジネスの企画やプランニング時には、情熱やビジョンといった「アート」の要素と、収益性や財務といった「サイエンス」の要素をしっかりと組み合わせることで、両方の長所を活かした強固なプランを作成することができます。
両者の活用に慣れていない方も、「向いていないから」「やったことがないから」と足を止めず、挑戦してみることが大事です。
後ろ向きな発言で足を止めるのは簡単ですが、事業の実現は遠のいていくばかり。
慣れないこと・不得意なことを習得するには時間がかかるのは必然です。
プランの基軸が定まりつつあるタイミングで苦手を克服することで、目前の課題の打破と共に、事業の将来性を拡大していけるきっかけとなるのです。