イントレプレナー塾
新規事業立案で必ずぶつかる?「見立違い」の4つの壁と乗り越え方
新規事業の立ち上げは、誰もが壁にぶつかってしまうものです。
今回は第二回となるイントレプレナーの会にて、実際に新規事業を立ち上げた株式会社クロスメディア・マーケティング 法人事業部 部長 幸坂健太郎様のスピーチをご紹介します。
新規事業担当者のみなさん誰もが抱えるであろう課題について、実体験を元にお話しされた内容です。
ぜひ新規事業立ち上げの参考にしてみてください。
講師プロフィール:幸坂健太郎様
大学卒業後から現在にいたるまで、在籍した各企業にて新規事業立案を担当。
イントレプレナー塾16期生として参加していた当時の企業では、毎週一本新規事業を企画。事業部長経由で社長に提出・プレゼンしていた。
現在は、500点以上の書籍を出版し数々のベストセラーを生んでいる株式会社クロスメディアグループに所属。2022年11月に新規事業であるオンラインメディア「こんな企業で働きたい」をリリース。
ここで幸坂様の新規事業をご紹介させていただきます。
オムニバス書籍シリーズ:『こんな会社で働きたい』
株式会社クロスメディアグループが2016年より出版しているオムニバス書籍『こんな会社で働きたい』シリーズ。(計14冊)
一冊に約15〜20社の情報が掲載されているこの書籍は、書店やオンラインストアでの販売はもちろん、全国の大学760校と連携。キャリア教育センターにも献本し、大学生のリクルート活動に貢献されています。
今回は幸坂様が実際に経験した新規事業立ち上げ時の苦労を、4つのポイントにまとめご紹介します。
1.ニーズ・課題の見立て違い
「顧客のニーズをくみ取れていない」「ニーズはあるのに思ったより売れない」。
新規事業に携わっていると、このような問題がたくさん出てきます。この課題を避けるためには入念な事前調査が不可欠です。
しかし企業は早急な投資回収・売上獲得を求めるもの。
幸坂様率いるプロジェクトチームも、エンドユーザーや市場のニーズを突き詰めたいと思う反面、会社からは(ニーズ調査に時間をかける必要はないという)否定的な姿勢に苦しみました。
速さが要求される一方で、正しい仮説を立てるためには正しい情報を収集しなければいけません。
そこで幸坂様は「多様なフレームワークの活用」「エンドユーザーへのアンケートや有識者の方へのインタビューを駆使」し、まとめレポートとして社長に提出しました。
レポートを提出したことにより、会社主導だったプロジェクトから権限移譲や予算管理の全権任をされ、チーム主導へと切り替えることができたそうです。
以降エンドユーザーのニーズをくまなくリサーチできるようになり、課題の見立て違い解消へとつながっていきました。
2.ターゲット顧客の見立違い(市場規模問題)
プロジェクトを進めるにあたって、当初想定していたターゲット顧客のボリュームが少なかったり、顧客セグメントの分け方を誤っていたことが発覚したりした時はどうしたらよいのでしょうか。
幸坂様のプロジェクトでもニーズ調査で想定ターゲットへのヒアリングを行った際に、ターゲット設定の誤りが発覚しました。
就職活動は通常、大学3年生から始めるため、幸坂様たちも3年生をターゲットに設定していました。
しかし、実際に企業への興味関心が生まれるのは大学1・2年生だったことが判明。なんと、書籍サービス時代からずっと想定ターゲットを見誤っていたのです。
3.自社サービスの提供価値の見立違い
誰から、どうお金を取るのか。マネタイズは新規事業立案とは切っても切れない問題です。
事業の収益化を目指す上で、自社サービスに価値を感じてもらうことは必須条件。
顧客の問題を解決するサービスを提供していないと、そこに価値は発生しません。
そこで幸坂様は改めて顧客目線に立ち返り、分析をしました。
サイト掲載が提供価値と認識していたところを改め、掲載から始まるコンテンツワールドに引き込む。取材した記事や撮影した画像を広報・営業に活用できるよう提供し、企業とユーザーとが直接コンタクトをとれる機能を追加する。
分析に基づいたシフトチェンジにより、サイト掲載以上の価値提供を目指しました。
改めて分析を行いシフトチェンジしたことで、価値をきちんと確立することができ、掲載企業のニーズに合致したサービスへと昇華することができました。
4.オペレーションが回らない(実現性問題)
どこの企業も抱える人的リソース不足は根本的かつ大きな問題の一つではないでしょうか。
人手不足により運営・オペレーションが回らないと事業の運営すらままなりません。
Webページの作成を含め全て自社内で内製化できるだろうという見立てに反し、本を作る作業と同数の行程がWebページにも必要であるという見立ての甘さの壁にぶつかったそうです。
各地への取材を可能にするため、外注先のライターさんやカメラマンさんを一から探しアライアンス関係を結ぶため全国をまわりネットワークを早急に構築。
そして、やっとこの問題は解決されました。
これらの問題から幸坂様は一つの学びとして以下のようにおっしゃっています。
「新規事業の立ち上げでは往々にして新規事業の企画者と、責任者が別ということが少なくありません。しかし、これらのケースは、いざ実行フェーズに移行しても課題の解決や事業の拡大に結びつかないことが多いです。というのも、事業を進めるにあたってはさまざまな見立て違いがあり、その都度小さな方針転換を積み重ねていく必要があります。
その際に責任や権限がプロジェクトチームになく、都度会社の判断を仰いでいては、現場はうまく回りません。会社の理解ももちろん大切です。
ただ、個人的な見解ではありますが、新規事業の立ち上げにおいては、企画段階から実行までチームに権限を委託するほうが事業として軌道に乗せるスピードや確実性が優れると思います。
新規事業発足後のすくなくとも初期1年は実質検証期間ととらえ、環境変化や想定外の事象に、柔軟に対応・改善していく心持ちを会社とすり合わせし、進める必要があると考えて下さい。
また、実際に対処するには様々なノウハウが必要になり、社内だけでの解決が難しい場合もあります。その時は上手く外注することも効率よく成功を収めるための選択の一つとなるとることも頭の隅においておくといいでしょう。」
今回はイントレプレナー塾出身の幸坂健太郎様のスピーチをご紹介しました。
今後もこのコラムでは新規事業担当者のみなさんが抱える課題を解消できる内容を順次発信してまいります。
イントレプレナー塾とは
約4ヶ月間(計8回)のオンラインとリアルを融合させた、新規事業を生み出すプロセスと共に、継続的に企業から未来を担う人材を送り出していく、人材育成プログラムです。
異業種交流型プログラムにより、同じ社内起業のミッションを背負ったイントレプレナー同士の出逢いが、イノベーティブなアイディア創出に大きく寄与しています。