第283回
「共感とCSV経営の両立」
8月4日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます。
デジタルクリエイター集団であるメンバーズは、社員との共感を大切にし、社会課題の解決を両立させる想いを持つ創業経営者の剣持さんのもと、社員と企業が共に成長する曲線を描くことができる理想の会社の姿といえる。
世界一のDX運用サービスを目指し、社会課題を解決するCSV経営への挑戦するメンバーズに今後も注目していきたい。
「共感とCSV経営の両立」
コロナ禍の中、364名の新卒社員がメンバーズに入社した。
メンバーズはウィンドウズ95が登場したインターネット社会幕開けの年に誕生した会社だ。このころスタートしたベンチャーの多くが変革できず姿を消したがメンバーズはリーマン・ショックによる経営危機も乗り越え、Webサイトの運用に事業を集中することで、2017年に東証1部上場を果たした。
現在、グループ全体で約1,800人を擁するデジタルクリエイター集団だ。マーケティングを「人の心を動かすもの」と捉え、IT(情報技術)で企業と人々のエンゲージメントを高め、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援事業でデジタル社会を先導している。
創業者の剣持さんとはスタートして間もない頃に出会った。「社員と共に会社を運営し、社員と共に栄える会社にしたいのでメンバーズという社名にした」という想いに共感し、出資や経営幹部の紹介を始め、社外取締役も務めさせていただいた。
剣持さんは独自の世界観と人間味溢れる感性で「社員との共感による企業成長」と「社会課題の解決」を両立させる思考を持つ創業者だ。
「共感の経営」のひとつとして、メンバーズにはmembersway協議会という活動がある。様々な部署から有志の代表者が集まり、待遇や職場環境に限らず、サービス改善や経営の在り方など、経営ボードに対して様々な起案をする。全社にライブ中継される中、両者が一同に会し起案の方向性を議論する。これまで「社用スマートフォンの導入」や「公認バカンス制度」など多くの施策がこの協議会から生まれた。
日本企業の多くが米国の経営に過剰対応した結果、独自性を失い日本的経営の本質を喪失しつつある。社員と経営ボードが「共感する経営」で働きたいと思える職場を自分たちの手で作り、社員と企業が共に成長する曲線を描けることが理想の会社の姿だ。
コロナ禍でリモートワークが広がり、社内コミュニケーションの難しさを感じている企業も多いなか、会社のパーパスを社員と共に実践するメンバーズの姿は、日本企業が何を取り戻すべきかを示唆している。メンバーズはVISION2030に「気候変動や少子高齢化に伴う医療費問題、地方衰退による財政破綻問題の社会課題」に重点的に取り組み、事業と両立させ解決に貢献すると定めた。
顧客に対して、メンバーズの社員たちが自らの意思と考えでCSV(共通価値の創造)アプローチを用いて、事業利益の追求とカーボンニュートラルの実現をはじめとする社会課題を解決する経営への転換を促していくという。
メンバーズが世界一のDX運用サービスを目指し、事業と融合し社会課題を解決するCSV経営への挑戦がスタートした。