第316回
現状打破の道
日本が世界をリードしていた頃、1979年にエズラ・ヴォーゲルが著したベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は、世界中で大きな話題を呼び、多くの人々に読まれた。その著者の息子であり、日本経済研究の第一人者でもあるスティーブン・K・ヴォーゲル氏は、次のような考えを示している。日本が現状を打破する道筋として、以下のポイントが挙げられる。
![](https://www.interwoos.com/newsite/wp-content/uploads/2025/01/42.jpg)
© Copyright 2024 UC Regents • University of California, Berkeley • College of Letters & Science
① 規制の見直しについて
「規制のない自由市場は存在しない。日本に必要なのは規制緩和ではなく、競争を促進するために市場をよりよく機能させるための最善のルールを設計することである。」
② 市場デザイン(Marketcraft)の重要性
市場デザインが鍵を握るとし、「日本が優先すべきは、人材、研究開発、技術およびその活用への投資である」と述べている。
「米国モデルを単に模倣するのではなく、長期雇用が安定した日本型雇用の強みを生かすことで、企業も個人も仕事に適したスキルを身につけやすい環境を作るべきだ。」
③ 産業政策の本質について
「政府に勝者と敗者を選ぶ能力はない」という産業政策批判については、「この見解は本質を誤解している」と指摘している。
たとえば、政策が後押しすべきは化石燃料からの脱却であり、風力発電や太陽光発電といった技術の中で、どの技術が有望かを見出すのは企業や起業家の役割だと述べている。
④ エコシステムのあり方
「日本にシリコンバレーを作ろうとする動きは、間違った場所を探している可能性がある」とし、
「企業内起業家による社内ベンチャーの新たな日本モデルを見つける方が良い。それが日本のエコシステム(ビジネスの生態系)に合致しているからだ」との見解を示した。
![](https://www.interwoos.com/newsite/wp-content/uploads/2025/01/DALL·E-2025-01-23-19.54.18-A-visually-striking-image-focused-on-innovation-featuring-interconnected-nodes-and-lines-on-a-map-of-Japan-symbolizing-a-nationwide-innovation-netwo.webp)
これは2024年元旦に発表されたスティーブン・K・ヴォーゲルのメッセージであり、日本経済に対する示唆に富む提言といえる。
インターウォーズを創業した当初、インキュベーションのあり方については、シリコンバレーを意識していた。しかし、「学ぶことはあっても、真似ることは失敗につながる」との気づきを得て、企業内起業家(イントレプレナー)に軸を置いたインキュベーション事業に取り組んだ。その結果、数多くの成果が生まれた。
今年度からは、大学で研究開発された市場性のあるライセンスを活用し、日本の中核企業を中心に、イントレパスと連携したインキュベーションに取り組みたいと考えている。これにより、日本の経済成長やイノベーションの創出に貢献していきたい。
![](https://www.interwoos.com/newsite/wp-content/uploads/2023/07/yoshii_sign-26.gif)