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コラム

第312回

社外取締役制度

企業内起業プロジェクトの本質と支援体制

長年、多くの企業のインキュベーションに関わり、ある種のパターン回路の認識がある。

企業内起業プロジェクトの本質が、企業のトップや受付に足を運んだ瞬間に直感的に分かる場合もある。イントレプレナーから話を聞くと、新たな意味付けや価値付けを発見できる。企業イノベーションの文脈には、プロセスに創業者の経営哲学があり、事実に基づく論理が存在する。

企業内で新たな事業を創り出すには、イントレプレナーに対して、長期的に支援する社外役員を含む経営陣が「投資家の構え」を持つことが必要だ。

社外取締役制度の課題と成功の要因

日本企業は、ガバナンスを強化する米国にならい社外取締役制度を導入した。

しかし、社外取締役が必ずしも上手く機能していないように思うことがある。社外取締役が些細な問題に口を出し過ぎると、事務局が準備に追われ、場合によっては取締役会用の想定問答を準備するようになる。社外取締役は社内の役員や監査役が気付かないような大きな長期視点に立ち、本質的な議論を展開しなければならない。

そして、取締役会の議論が細部に入りそうになったら、あとは任せ委ねるバランス感覚が求められる。

実際には、リスクマネージメント職や企業経営に関わった専門職経験がある社外取締役は細部に目を向け、有識者の社外取締役は経営の実態を踏まえない空理空論を唱えがちだ。議論がまとまらず、混乱が起きることがある。内容に関わらず取締役会で発言すれば議事録に記載が残り、社外取締役としての仕事を果たしたことになる。

そんな考えで発言する人が多いと聞くが、時間の無駄だ。

社外取締役制度は、賢さとバランス感覚を兼ね備えた人材を選んでこそうまく機能するシステムだ。

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