第13回
「パスタフローラ 丸山和俊社長」
過日、丸山さんと高層ビルのレストランで食事中、5弱とはいえ、それなりの地震が来ました。周辺のテーブルで、「地震よね、地震よね。すごく揺れてる!」「大丈夫かな・・」というざわめきが聞こえる中、揺れることも意に介せず、「それでね、北條さん、今年、やっと僕が前から願っていた、食育基本法が成立したんですよ、そもそも、食育法というのはね」と熱く、楽しそうに語リ始めたのです。
私も、観念して、本年715日に成立された食育基本法について、一緒に揺れながら、自分の強運を信じて聞き始めました。食育法を話すときに体が揺れる後遺症がついた気がします。
日本において、私たち人間も、共に暮らすペットも、企業の効率UPや、低価格競争による弊害で、かなりの期間、体に悪いものを食べ続けてきたという事が良くわかりました。
10年ほど前から、マクロビオティックとか、ローフードとか、医食同源の概念とか多くの書籍や、メディアで取り上げられるようになってきましたが、実際は、価格の問題や、食材供給の難しさから、なかなか、普及しづらかったのです。
食育法ができたという事は、企業は、食材や、添加物に対しての表示責任はもちろんの事、管理も問われます。消費者も食に対して、教育を受けるので、知識が豊富になり、食べ物を自力でも選別する事ができるようになるのです。
「これからは、体にいいものを、食べる時代です。僕は10年以上も、ずっとナチュラルフードでチェーン店を作る夢を追いかけてきました、苦しいことばかりだけど、先が見えてきたから、もっと、もっと頑張りますよ。」と力強い言葉をくれました。
本来、彼は、商品企画、開発、調理技術開発力は、天才的な人です。にもかかわらず、想いを遂げる為に、経営者の道を歩まれたので、経営と思想との板ばさみで、これまで、数々の、かなり辛い選択をしてこられたと思います。
しかし、これからは、今までの苦労が報われる時です。「カフェタイプのFC展開も順調です、テレビ番組の食材提供も、進んでます!と、忙しくなるほど、ますます、寝る暇も無くなるのに楽しそうでした。
起業家としての最大要素は、なにかに取り付かれたように、一心不乱にやりつくす「魂」です。しかし、経営は、人材や、企画の判断を誤ると、会社の運命を大きく変えてしまいます。匠の技を持つ、天才であろうと、経営は厳しく、難しいものです。
帰りの道すがら、丸山さんに始めて会った時の言葉を思い出しました。「ある教授に、『丸山さん、私たち生活者の健康を守るのは、貴方達、外食の人達の使命じゃないの?』と言われた事が、僕にとって神の声だったのです。だから僕は、難しくても、人に優しい、美味しい食べ物を出せる店を全国に増やしたいのです。」という純粋な理念でした。
どんなことがあっても、初心を忘れることなく、起業の難関を乗り越え、お客様に喜んで頂けるレストランを、沢山創って欲しいと願っています。