第50回
「雑草の時」
「雑草という名前の草は無い」昭和天皇が言われたという有名なお言葉だ。この言葉を知ったのは20年も前だろうか、随分と心が救われたのを覚えている。
もう一つの心の救いは、中村天風さんの「人間の価値は、頭の良し悪しではなく、心の良し悪しだ」という、目から鱗が落ちる言葉だ。頭が悪いと悩んでいた私には有難い言葉だった。
それでも、いつの世も、経済力(権力)が大きく人を差別、区別する。人間の価値の心の良し悪しの前か後に、お金(力)を持っているかいないかというもう一つの価値が存在しているのも事実である。
究極にお金に困ってくると、どんな人も顔つきが変化して、魂が汚れていくように見える。貧乏が悪いという訳ではなく、自分の理想の場所から落ちると思う時、自分の地位、権力、資産、人脈という財産を無くす恐怖は心も脆くするようだ。
人は、無一文からでも、本物の命があれば、またやり直せるのだが、なかなかそう安直には考えられないのだろう。雑草の如く、踏まれても、むしられても、コンクリートの隙間からでも、ひょっこりと芽を出すような強かさがあると、どんな時でも楽しく生きられるのにと思う。人間に最も必要なマインドは、この雑草のような強さ。とにもかくにも、へこたれない根性だと思っている。
私は、職業柄、代表取締役という肩書きの知人が多い。中でも少数で起業している会社の代表者は、500名は越えているはずだ。
この方たちとお会いする度に、いつも思うのは、この雑草の如くの強さである。大手企業、競合の隙間をぬって、しっかりと独自のサービス、商品を生み出し、誰に束縛される事無く、自分の意思で事業を進めている。
もちろん、雑草の如くなので、あっという間に踏み潰されたり、むしりとられたりして辛い目にあう事等、日常茶飯事のようだが、少しでも根が残っていれば、また、伸びだす。
その強靭な精神力に目を見張るものがある。
最近は、計り知れない不況の恐怖が庶民の生活観を萎縮させているように感じるが、このような環境下でも、これまでも自立して、生き抜いてきた人達は、いまこそという気合で逆にいきいきとしているように見える。
インターウォーズの流通業界のブレーンとして活躍してくれている株式会社ショップクエストの樋口社長も同じように、今こそ、自分の信じていたビジネスが社会の役に立つ予感がしている一人だ。
ショップクエストは、商業施設に出店を希望するテナントとテナントを探す商業施設をつなぐ、懇切丁寧な情報が満載されている情報提供サービスをリーシングのコンサルティングと併用しておこなっている。
まさに人間力による、これまでの人脈で作り上げたデータベースなので、現場一筋で生きてきた人達の結集の情報ならではの、実にリアルで希少情報が得られる事で、それぞれの無駄な時間、無駄なコストを排除できる上に、日本の商業、流通業の勉強にも役立つ。年々、このサービスを活用される会社が増えてきているのも、頷ける。
しかしこの事業を認める顧客が増えれば、増えるほど、社会に貢献する仕組みを確固たるものにする力が必要になるはずだ。
雑草の中でも、名前を知られている「セイタカアワダチソウ」や「オオバコ」「ツユクサ」の如く、いつのまにかに、勢力を拡大していくためには、多くの方の協力を仰ぎ、雑草の強かさを忘れることなく、更なる成長を続けて欲しいと願っている。