第68回
「クオリアの経営」
Qualiaクオリア (単数形 Quale クワーレ)⇒感覚を構成する独特の質感の事。
クオリアを始めて耳にしたのは、堀場製作所の堀場会長にご講演を頂いた時です。これからの「時代はクオリアだ!!」と。クオリアは、「感動、なにかぐっとくる事」というお話しでした。心に残ったので、私なりに調べて、私なりの解釈をしました。
1.クオリアは1,000億の脳の神経細胞の活動によって生まれている。
2.クオリアというのは、人それぞれに感じるものであることから、同じ感覚を持っているかどうかは、現在の化学では解明されていない。
3.クオリアを感じる為には、そこの「何かに向かう」という志向性がないと感じない。つまり、クオリアと志向性が一致して「私」になる。
4.クオリアとは、いわゆる「感じ」「こんな感じで」の感じ。
5.味覚、聴覚、視覚、嗅覚、触覚、のどこにでもつく「感じ」。
以上、私の解釈は、こんな感じでした。
指紋は、一卵性双生児の場合でも同一でないといいます。同じようにクオリアの感じかたもその人だけのものだとすると、私の指紋、私のクオリアなのですが、このクオリアは可視化も計算も不可能に近く、今はクオリア認証システムがないので、個人認証には使えません。
そうはいっても、世界に一人の「私」の感覚の存在を大事にして、感動的な人生を過ごしたいと、クオリアを勝手に理解した私は思います。
相性というのも、もしかしたらこのクオリアの共鳴で生じる事かもしれません。同時に、素敵な景色や、有名料理店に人が集うのは、そこでいいクオリアを感じる事ができるからではないでしょうか。
そして、そのクオリアを共感しあえる仲間が集った企業は、幸せな形で成長していくものだと思います。
そういえば、スターバックスには、良いクオリアを感じる事に気づきました。
店内を観察していたところ、ファストスタイルのお店としては、作業場が広いのです。スペースのゆとりか、スタッフの活き活きした動きも、良い気を出しています。楽しそうに働きながら、細かい注文や、様々な要望に実に快く応えてくれます。
その背景には、憩いの場を提供するコンセプトに基づき、大事なスタッフの働きやすさも考えた感性が、あのクオリアを生んでいるのではないかと思っております。正直、珈琲を飲むのが目的であれば、他にも美味しく、リーズナブルなお店が沢山ある中で、今も安定したファンがいらっしゃるのは、クオリアを大切にされた経営の賜物ではないでしょうか。
スターバックスでは、創業以来、定期的にブランディング会議が行なわれていると聞いています。10年程前に、「ブランドは顧客との約束だ」と教えてくれたのは、スターバックスの創業期のブランディングメンバーでした。
現在、日本のスターバックスを担われている岩田社長も人の気持ちを大切にされる方です。
先日もNBCでの講演を受けてくださり、スターバックスの歴史、ポリシーそして経営者としての自分の考えをお話し頂きました。そして、「最近、嬉しかった事は、自分の店の前で事故が起きた時、寒い中、外で処理を待っている方々に、暖かい珈琲を、励ましの言葉と共に提供した社員の事を聞いたときです」と言われた時に、創業者の思いを受け止めてキチンとクオリアを継承して頂ける方だと確信しました。
現代まで続いている会社組織で最古は、日本の金剛組(宮大工)1200年だそうですが、最古の薬局サンタマリアノベッラ800年。羊羹のとらや500年。やはり、これも、良いクオリアが伝承されている結果だと思います。
スターバックスも、数百年に渡る歴史を創っていかれる「感じ」がしています。