第72回
「働く気持ち」
働くというのは、人の為に動く事である。体を使おうが、頭を使おうが、道具を使おうが、働くとは人の為に具体的に動く事だ。その動く行為を特定したことによって対価を得る事を労働という。
仕事ともいうが、労働は社会が認めるもの、仕事は自分が認めるものである。と私は思っている。労働は食べるためで、仕事は生きがいだと区別される事もあるらしい。なんとなく解る。
いずれにしろ、生活をする上で、お金は必要だ。働かないと食べられない。
すぐお金の話になるので、昔からお金に執着すると誤解をされるのだが、正確にいうと執着ではない。固執だ。私のお金に対する思いは、その時々の課題解決に対する固執なのである。
何にでも目標があれば、予算が必要なだけである。自分らしく生きる為に、お金は欠かせない。
そして、その自分らしくの「自分」にどんなイメージを持つかで、働く内容が違ってくる。どうせ働くなら、こうなりたいと思う自分を、イメージをして欲しい。
例えば、何歳で、自分好みのこういう事務所にいて、部下が何人いて、誰とどんな話をしているかまでの具体的なイメージだ。なんでもいい、一瞬のシーンをイメージする事。これが、鮮明になると、自然と脳が体を動かし始める。不思議とライフスタイルも変化する。
基準が明快になるので、余分な事はしなくなる。そして足りない知識を補う努力が始まる。
経営者を目指す人は、それなりに、技術者を目指す人もそれなりに、芸能界を目指す人もそれなりに必要な知識が沢山ある。それを、勉強なのか経験なのか、日々積み重ねて、ともかく知識を増やして準備ができると、イメージ通りの人生に近づいている。なりたい自分には、「出来る事」が必要で、その為に「やるべき事」があるのだ。
時々、なりたい自分が見えないという人がいるが、確かに、何の為に働くのか等を考える事ができるくらいに、平和で豊かな時代である。無理やり将来を考えろと言う方が無理かもしれない。
でも、一度きりの人生だ、自分の未来は自分が創るしかない。未来は遠い先の事ではない。すぐそこ、今が、未来に繋がっている。イメージができた今から始めるべきだ。
もちろん、目標にたどり着ける人は少ない。しかし、0ではない。なりたい事を考えずに、ただ年老いて、ますます何も出来なくなっていくよりは、努力をして準備をしておく方が数倍楽しい人生である。是非、将来の為の準備を始めて欲しい。今20歳の人も、50歳の人も。
和僑商店の葉葺社長と話をしていると、いつもの事だが、人生が楽しくなってくる。10年たっても変らない前向きな精神と、ずば抜けた行動力が、思いもかけない結果を導いているので、事実にもとづく話は、とても参考になる。
彼に、そんなに元気に働く気持ちの源泉は何か?と尋ねたところ【お客様の喜ぶ顔】と即答された。お結び事業につぐ、第2のチャレンジは、国内でも希少なオリジナル麹商品の販売なのだが、そのお店の開店に際して、大事な事は、応援してくださるファンを増やす事。ファンの期待を裏切らない事、その為にやるべきことは、より良い商品の提供や、サービスを打ち続ける事だと確信したそうだ。
そして、なにより、その努力が、お客様の笑顔につながると、益々頑張れるとの事だった。
自分達の仕事は、朝から晩までお結びを握る作業のことではなく、顧客の笑顔の創造だという彼は、これまでずっと日本の食材、お米に拘り続けてきた。これからも、お客さまの驚く顔、嬉しい顔を見る為に、お米に関連する新たな食材の開発や販売方法を工夫していくらしい。
生きる為に、働いて稼ぐという事は、社会に生きる大人としての義務ではあるが、自分の仕事が生きがいになるのは、「誰か」の為に行う具体的な努力が報われる事だと気づかせて頂いた。
働く気持ちに必要なのは、自分を必要とする「誰か」の笑顔なのだ。私も、和僑商店の一人の顧客として、次の驚きを楽しみにしている。