第88回
「和名はミドリムシ」
10月初めに開かれた食品開発の展示会場で、緑色でしっぽがある豆?のような、生命体に出会った。数日後、その企業(株)ユーグレナ(euglenaが学術名なので、会社の名前はユーグレナである。)のプレゼンを聞く機会があり、ミドリムシの生態に興味をもっていたところ、その10日後、またもや身近な会のゲストでユーグレナの出雲社長が登場された。
一月の間に3度も遭遇した事もあり、物忘れ自慢の私でも、簡単な説明ならできる。
まずは、「ミドリムシはキャベツについている青虫ではなく、5億年前から存在する原生動物であり、様々な栄養素を持つ生命体である。これが大事。
どうも、あの青虫のイメージがつきまとうが、全く違う生物である。植物のように光で栄養素を作り出し、移動する動物としての機能も併せ持つ唯一無二の生命体だ。」という程度だが。
実は、これくらいは、出雲社長のプレゼンを一度聞かれた方なら覚えてしまう。ミドリムシを語る出雲社長は、聞き逃させない迫力と説得力があるからだ。
出雲社長は、東大卒のエリート銀行マンとして、人生を送る道があったにもかかわらず、ミドリムシをあきらめきれず、早々に研究室に戻られ、様々な努力の結果、食料としても、燃料としても活用できるミドリムシを培養する環境開発に成功された。
最近では、メディアにも注目され、多くの企業から興味を持たれ始めている。
どこにでもいるミドリムシがなんでそんなに凄いのかと思われるかもしれない。なんなら、近所の池の水を飲んだらいいのかとか思われるかもしれないが、残念ながらミドリムシにも種類がある。
ユーグレナのミドリムシは59種類もの栄養素を持つグレードの高いミドリムシ。そして、そのミドリムシだけが生き残れる特殊な環境により膨大な数ができるので、栄養素としての価値があるのだ。
それにしても、今時、こんな嬉しい話があるだろうか。発明や、開発や、改革には、半端じゃないエネルギーがいる。安定した暮らしとは、絶対に、絶対に比例しない、凄まじい根性と執念と忍耐を必要とするものだ。にも拘わらず、普通の暮らしをするのに何不自由の無い人が、全てを犠牲にして、未来の為に取り組んで頂いている姿には、神々しさすら感じる。
出雲社長の熱意のおかげで、5億年も前から存在した生物が、これからの地球の食糧危機を救う事になるとは感動的ではあるが、ミドリムシを食べるという事に抵抗感はないのかと思っていたら、若者の街原宿では、ミドリムシソフトクリームが人気だそうだ。
ジャンクフードだけでなくミドリムシを食べて栄養のバランス取っているとは、やはり若者は感度が高いのである。未来の食生活を心配する必要は無いのかもしれない。