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コラム

第106回

「負けない為に」

生きている人間の数だけ、それぞれ困った事情があって悩みがある。それなのに、家族でも家族同様でも、身代わりになれない。仕方がない、自分の問題は、自分が解決していくしかない。

けれど言い換えれば、自分次第なのだから、考え方で事の大小は決められる。楽な方法は、同僚や仲間や友人と競争や比較をしなければいいのではないだろうか。世相に惑わされなければいいのではないだろうか。対象をつくるから負けた気になる。

私に対して遠慮という大事な言葉を知らない人達は、「あなたのように、どんな目にあっても、脳天気で生きたい」とか、「いけしゃあしゃあとか、ぬくぬくといえば、お前の事だろう」とか、「君は確実に人一倍長生きする。すでに100歳超えているのではないか」とか好き勝手な事を言っている。まあ、概ね合っている気もするので反論はしていない。

むしろ、図太い私だからこそ、起業する人や独立する人を応援できると思っている。目の前が真っ暗になっても、傷だらけでも、必死に動いていたら、可能性はあるのだから。なにがあっても、あきらめずに何度でもやり直せばいい。

無一文になっても自分を捨てずに生き抜いている人も大勢存じ上げている。なにより私でさえ、なんとか生きているのだから、安心してもらえるという自信がある。人生は自分次第だ。可能性はゼロではない。

先日も恒例の会で、株式会社ニュートンの荻野氏から頼もしいお話が聞けた。

荻野氏は、事業拡大の読みが外れて莫大な負債を背負いながらも、最後の砦となったお店の現場を見直した結果の徹底的な現場主義の戦略があたりまくり、今では首都圏中心で、多業態、多店舗展開されている優良企業のオーナーである。

茶目っ気たっぷりで愉快な話ぶりなので、重苦しさなど微塵もなかったが、信頼を失墜し、負債を抱え金利に追われる日々のご心中は、察するに余りある。しかし、どんなに辛くても、必ず、明ける日が来る。その人の心根一つだと、改めて思わされた。

もしかしたら、荻野氏の辛さを救ったのは、現場で遭遇したお客様の笑顔だったかもしれない。お客様との接点にはそういう力がある気がしている。

荻野氏の事業の目標は、お客様から、何かの時の神頼みの神様になることだそうだ。その言葉には、ものすごく深い本物の心意気を感じた。

現場とは、今、事が動いているところだ。どんな仕事もそこに問題解決の全てが詰まっている。その問題を、お客様から、神様と言われるような解決をすることこそ、プロの仕事であり、矜持なのだと思う。

やはり、負けない人の目標は競争でも、勝負でもなく、目の前のお客様の要望であった。むしろ終わりのない勝負に挑んでいるから、他の対象が眼にはいらないのかもしれない。大は小を取り込んでしまうのだ。

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