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コラム

第109回

「諦める覚悟」

諦めるとは、投げだすことではなく、明らかに究めることであり、諦める事で、新たな覚悟が決まると五木寛之氏の本に書いてあったと記憶している。

今夏でまた、歳が増えた私は、数年前から年を重ねていく事に得も言われぬ恐怖と不安と哀しさを覚えていたのだが、そろそろこの諦める覚悟を決める時がきたようだ。

なにしろ、生存する限り老いていくことは、抗いようのない事実である。高級化粧品でも、ゴッドハンドマッサージでも、貴重なサプリメントでも防ぎようがない。

そんな事で、なかば、覚悟というよりもやや捨て鉢的な考えでいたある日、本棚を整理していたら、10年前に立ち寄ったお店で頂いたご本が眼に入った。

「今宵もひたすら、一生懸命」という、100歳現役の銀座Barのママ有馬秀子さん。50歳で起業され50年の時を銀座で過ごされ、著名な方々との交流もあった有名なBarのママさんである。

101歳で亡くなられてからも、お店は開かれていて、バーテンさんとの会話で、お人となりを垣間見ることができたのだが、上品で凛とした方であった事は店の雰囲気からも感じ取ることができ、今もお店にいらっしゃるような気がしたのを覚えている。

そして、あれから、10年、いまやメディアで取り上げられるスーパー婆ちゃんには目を見張るものが多すぎる。80歳で宅建免許を取得後、起業して3年で年商3億にした小柄な女性社長。90歳を過ぎてもカメラマンとして活躍している女性。現役美容院の先生。化粧品のセールスレディ。世界記録保持の女性ランナー。水泳選手。ありとあらゆるところで、超高齢の女性の活躍が目につくようになってきた。

なんなんだ、一体。女性の本性というのは、なんなんだ。家事育児に没頭して世間から少しばかり遠ざかっても、この、物凄いエネルギーで、すぐに取り戻せてしまうのではないだろうか。

若いシングルマザーさんもそうだが、覚悟を決めてしまえば、その女性の底力たるや果てしないものを感じてしまう。諦めとは、誰も頼れない、国も家族も頼れないのだから、全て自分でやるしかないと決める覚悟である。

これは、フィクションだが、マルタの優しい刺繍という題の80歳を過ぎたスイスのお婆ちゃん起業家の映画がある。ここにもこのマルタを通じて、女性の覚悟が表現されている。

同じように苦労をしても、諦めや覚悟がないと、ひたすら苦しく辛いものなのだが、他に頼れないという覚悟があれば、なんとか乗り切れるものだと思う。

頼れない覚悟があれば、解決の為の知識を求めるし、具体的な行動を起こすものだ。超高齢でも、健康な体が残っていれば人の為の役に立つ仕事ができるのだ。夢を持って挑戦することも出来るのである。

なによりも、有馬さんの「ひたすら、毎日一生懸命」の言葉通り、毎日を大切に、人の為に一生懸命に生きることが、幸せに長生きできる秘訣なのだ。

つまりは、誰かの役に立つことを考えている間は、老けないということだ。これは、いい。一挙両得だ。

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