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コラム

第111回

「美しい人生」

何年かに一度、憧れの仕事をしている人に出会う。心から憧れる女性に出会う。

もう、何年もお会いしていないが、素晴らしいレストランを経営されていた女性社長にも尊敬と憧れを抱いていた。経営方針だけでなく、女性としての生き方や立ち振る舞いが美しかった。

その方は、今でも話題の飲食店を残し、ご自身は誤算による破綻の責任を負って経営を退かれたが、その最期の挨拶となった手紙も、一生心に残る素晴らしいものだった。美しい花は去る際までも美しいと知り、感涙した。

そして、最近になって、久しぶりに美しさを感じる女性社長に出会った。格好いい女性社長や、男子顔負けの迫力ある女性経営者には、かなりの頻度でお目にかかっているが、この仕事は女性にしかできない、しかも美しい女性しか似合わないビジネスを営む女性に出会えたのは、本当に久方ぶりだった。
ECOMACOというブランドの経営者、岡社長である。

繊維メーカーから糸を仕入れて、自社でデザイン、染色、縫製、販売をしている。背景は服飾学院。自然と環境を大切にする総合プランナーで、教育者であり、デザイナーであり、経営者である。そして、作品はまるで彼女を表すかのように美しい。

コンセプトは、自然を大切にしたライフスタイル。生まれた生地は最後まで、「何か」に『美しく』使う。

そして、それを商品化するために、地方で埋もれている特産品を活用し、働く場のない人達に仕事を提供するという、どこまでも美しい心からの仕事をされている。

植物を加工した繊維は、とても肌に優しく、染色も自然の物を使うので品が良く、環境に優しい。なにより、デザインもエレガントである。

実に無念な事に私には、まったく似合わないタイプのものだが、こういう服が似合うような、容姿や性格、せめて生活環境に恵まれていたならば、と。本音で思うほど、とても、素敵な作品ばかりである。

そのファッションが良く似合う岡社長は、「私は、捨てたくないのです。せっかくの物を、工夫して何かに活用して大事にしたいのです。染めたり、縫い直したりすることで、こんなに蘇るのです。私、しつこいんです。」

と、とても大変で、面倒で、すごい事を実行しているにもかかわらず、とても可愛い笑顔で話をしてくれた。その考え方、生き方、その作品。全てにおいて美しい心を一貫して通している。美しい人生は、美しい心を持ち続けてこそ、歩めるものなのだと思い知る。そして、美しい心は、幸せな時間を創造する。

心を入れ替える事ができるのならば、遅きに失してなければ、まずは、モノを大切にすること、もったいない精神を持つことで、残りの人生を美しく変えていきたい。

間に合えば、あの素敵な服が似合うようになりたい。間に合えば…。

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