column

コラム

第25回

「企業内起業はなぜ成功しないか」

現状の事業の延長に未来は見えないと、大転換期の今こそ大企業も中小企業も新規事業に取り組んでいるが、「新規事業は苦労ばかり多く、なかなか成功しなく、断念している」ケースが跡をたたないとの声をよく聞く。

失敗の要因の前に前提として理解しておいてほしいことは、企業として新しい事業だけに「知らないことが多い事業」であると定義すべきだ。

要素は
第一に、顧客、販売方法、ルート、競合、などの市場。
第二に、製品、製造方法、技術、生産コスト、など製品、サービス

タイプは
1、多角型新規事業(住友金属鉱山のキンコ―ズ、などのケース)
2、市場開発型新規事業(ホシザキ電気のレストラン食器洗事業)
3、技術開発型新規事業(オリンパスの医学検査事業)

ということを事前に理解した上で戦略の選択をしてゆかねばならない。特に多くの大企業が失敗しているケースを、一言でいうならば、大企業経営ノウハウと起業のノウハウは全く違うという洞察が足りないからと思う。

企業内で新規事業が生まれるケースは、経営層から発案されるか、ラインから提案されるか、(外から提案、持ち込まれるか)にある。いずれにしても、立ち上げ資源の大きな要素は起業家の選択にある。

しかし、時として起業と対極をなすような人に依頼することが見受けられる。また、社内の既存事業との人材も含めた、資源獲得競争になるが、得てして稼ぎ手としての責任者の発言力に屈してしまうことになりがちである。

このこと理解した上での、トップが責任をもち推進する為のトータルな支援判断をしなければ、成功はしない。

次に、素人集団による審査、判断によって意思決定がなされているケースが意外なほど多い。過日、某大手企業の審査委員として、役員会議に参加させていただいた際、ITを「イット」と発言された創業時からの役員の方に出会った。

人格豊かな立派な実績の持ち主の社内実力者である。サイバー社会における新規事業をテーマにしたこの会議は、市場や技術、製品に通じていない多くの幹部のおりなす独特の雰囲気の中で意思決定が行われていることに恐ろしさを感じた。

また、社内関連部門の支援能力、意識の不足等もあげられる。多くの新規を任された個人の「つて」に頼って開発をしてゆかざるを得ない俗人的な動きになっているケースが多い。

新規事業開発室、事業開発部とかいった名称のセクションの多くは、単なる事務的な役割しか果たしていなく、社内の新規事業を支援する専門組織になっていないことが多い。

本来の役割は、社内外に対する政治的な活動も含めた、仲介コーディト、教育、メンターとして、事業計画の作成支援、資源の獲得支援、また、成長期においては内部支援システム支援といった専門のインキュベート機能が求められる。

また、大企業全体のカルチャー、風土の中での管理・運営であるだけに、DOすることへの時間より、報告する時間に多くを費やしてしまっている。

そして、甘えの意識と人事制度や報酬なども若干の差はあるものの、平等主義の共存となっており、割に合わない制度となっている。こういった障害や問題点が、企業内での起業を行うことの失敗の共通要因となっている。

社内起業はどうすれば成功するかは、これまでのいくつかのコラムを参考にしていただきたい。

コラムを毎月メルマガでご購読