第29回
「自分ドメインの設定から未来の“ありか”が見えてくる」
以前お会いした際、また会いたい余韻の残る人達が、大手企業中心に、輝きを失うことが多くなっているように思える。
どんなに才能があり地頭が良く人格豊かな人でも、自分が「どの分野で」、「どのような役回りで、強みを生かして活動をするのか」といった、企業でいうところのドメイン(事業領域)を設定しなければ、エネルギー集中が起こらず、自己表現できずに終わってしまう危険性がある。
自分のドメイン、つまり「生きる場」「活躍の舞台」を設定するには、自分をまず棚卸することからのスタートをお勧めしたい。
自分のこれまでのキャリアで内面充実していた時、その要因(条件)になるものは何か、充実感を下げる要因は何か、他人から評価された仕事、その中でやったこと、できること、自分の得意な優位は何か、また、苦手に思うことは何か、自分の大切にしている価値、判断の基準、よりどころは何か、そして、「収入」「人間関係」「肩書・名誉・自尊心」「能力と適正」「自己実現」を1~5段階で自己評価してみて欲しい。
これからはその道のプロフェッショナルにならないと、知識仕事人として生きてゆけない。プロフェッショナルと呼ばれる人たちの共通事項は、常に自分自身の棚卸を行い、ドメインの設定を時々繰り返している。そして、キァリアドメインを設定するに当たり、まず初めに、自分の「やるべきこと」、今後の制約条件はあるかどうか。
例えば、「家族を養わなければならない」「地元に戻って家業を継がなければならない」といった自分が望むと望まざるに関わらず、人にはそれぞれの事情、制約条件がある。「やりたいこと、好きなこと」を優勢させるといった考え方で選択するにも、棚卸の際は「やるべきこと、制約」の現実と向き合い確認することは自分を納得させるためにも大切だ。
「今」自分が置かれている状況を客観的に整理することは、自分自身の姿を眺めることができる。次に、「やりたいこと、好きなこと、あるいは志」は何か?
なかなか言葉にして出せる人は少ないものだが、これまでのキャリアの中で「最高に充実していた仕事の瞬間」は何をしていた時か。人からも高いく評価されていた時、また、「あの人のようになりたい」憧れの人。といった視点でポジティブに夢をみることである。
そして3つめの視点として、自分の「やれる、できる」ことは何か。
これまでの経験から身についた知識や能力、専門知識、技能。あるいは、コンセプチュアルスキル、コミュニケーションスキル、人を楽しませる、元気づける、納得させるスキルなど、自分では以外と気がついていないけど他人から見ると価値あるものを自信を持って確認して欲しい。
以上、3つの視点から自己の棚卸してゆくと、その中身は進化し、変化もする。
しかし、大切なのは、棚卸の結果そのものではなく、今後の自己のドメインをどう定めるかにある。「やるべきこと」を無視しても上手くゆかず「やりたいこと」でなければエネルギーが沸かない。「やれること」から大きく離れると、労力の浪費に終わってしまう。
会うたびに大きく頼もしく成長し自分を確立している知識仕事人のプロたちは、3つのバランスに焦点を当て自分ゴールを設定し、達成プロセスで「やれること」と「やりたいこと」の輪を大きく広げている。
自分を生かすドメインを設定する「知識仕事人の個」のあり方に、未来の「ありか」が見えてくる。