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コラム

第39回

「カウンターで」

原宿の朝5時までやっている「クラブS」。月2回イベントで流れるレコードの柔らかな音色が好きで、時々アントレ仲間と出かける。

常連の客で混み合ってくるとカウンターで飲むことが多くなる。カウンターの中にいるかわいい女の子とたわごとを言いながら隣の仲間と会話を重ねていると、いつもと違った話が展開する。そして、異次元の会話に発展してゆくと、ここに集う多彩な顔を持った客と、いつの間にか旧来の仲間のような関係が生まれる。

フランスから単身赴任で、日本に来てカルフールを立ち上げたかっこいいおじさん。照明インテリア器具を趣味に創っているお兄さん。モヒカンヘアーのやさしいラジオパーソナリティの人。時々テレビに出てくるアーティストのお姉さん。大金持ちの社長さん・・・仕事も趣味も楽しんでいる素敵な笑顔の人が多い。

こういった人達と展開される会話から見えてくる素顔は、地域、趣味、家族、研究テーマを持った顔が見えてくる。

人は誰でも人生ステージで、それぞれいくつかの居場所を持っている。お祭りに参加すれば地域の人、趣味で絵を書いていれば画個人、家庭を持っていれば父親、介護ボランティア個人・・以外と意識していない人が多いが、こういった役割が人をバランスよく心豊かに成長させてゆく。これを私は、人生のキャリアだと思っている。

キャリアというと仕事や専門知識といったイメージだが、実際は深く幅広い。仕事に限定しないで、上下の縦線でない幅広く横に広がる世界を求めて選択してゆけば、肩の力が抜けてくる。

サッカーの監督、花造り職人、恋人も、みんな役割、キャリアの一つだ。様々な姿を発見した時、ときめきが生まれ、人との出会いから生まれる語りが楽しくなる。

明日、カウンターで誰と出会うかは、わからない。

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