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コラム

第40回

「ベトナムで出会ったビジネスマン」

6月上旬、カオスの街ベトナムのホーチミンに行ってきた。オートバイと自転車に跨った人々が、信号機のない道路を、とぎれなく川のように流れ、道脇には牛や鶏が歩いていた。

また、永年フランスの領地にあったせいか、フランスパンを売っている姿が街のいたるところに見うけられ、忽然とニューヨークを思わせるような高層ビルが立っている。

蒸し暑い日中汗を流した夜、在住の日本ビジネスマンと「バーバーバービール」を飲んだ。Iモードの画面を見て「おたまのようだ」と驚きながら、現地の話を聞かせてくれた。

彼は、3年程前までは、英語もベトナム語もまったく話せなかった。学校にゆく時間もお金もない中で、当地のガールフレンドを通じて言葉を会得とのこと。

「今では日常の生活には事欠かないが、自分のベトナム語は女言葉で現地のスタッフを注意してもどうも迫力がなくなめられてしまう。」と苦笑しながら話してくれた。

今のベトナムで起こっている経済の出来事は、ほとんど「爆発変化」で、猛烈な勢いで日本に迫っている。月給3,000円~7,000円の労働者が、真剣に自分の人生を自分でハンドリングしながら必死に生きている。そしてベトナムの庶民達の、人権や命の軽さ、様々なリスクの中で生き抜いてゆく気構えや技術を語ってくれた。

彼の発する言語の一言一言には、迫力があった。自分の所属している会社に対する評価や不満を聞くことなく、今、自分が向き合っている世界と、どう呼吸を合わせるかといった現場の話に終始した。組織に頼っても誰もベトナムでは救ってくれない!理屈でなく体で理解し、人が生きてゆく上での「人間力」を感じた。

社会インフラも会社組織も整備さていない環境は、その人の持っている潜在的な力を引き出すのかも知れない。様々な人との瞬間のような出会いから、その人に応じたソリューションサービスを手際よく対応してゆく姿は、自立した人の強さと頼もしさを見る思いがした。

自分の「人間力」で、仕事を創り上げ「MADE IN 自分」である彼のような姿が、これからの日本にもっと多く出現してくればこれからの未来は明るくなるのだと思う。

別れる際、オートバイにまたがり「お元気で!」と爽やかな笑顔で走り去った姿が、脳裏に残った。

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