column

コラム

第44回

「ポジティブシンキングのリュウド長澤さん」

「いや~本社が土砂崩れにあって、半分埋まってしまいました」今年5月の連休明け、インキュベーション先のリュウド社の長澤社長から聞いた第一声である。驚きの事件を、「気にするといけないので連休中連絡しなかったんです。」と、笑顔で語った。

リュウドの長澤社長は、昨年自ら単身で、当社の出島インキュベーションスペースに入居してきた。コンピューターと携帯電話の周辺機器の特許をいくつか持ったメーカーとして、日本一雪深い新潟松之山町の注目ベンチャー企業である。

東京で週2~3日、長澤社長自ら新規事業の立ち上げで、陣頭指揮をとっている。
長澤さんが出社してくると、会社に流れる空気が変わる。流暢な英語で海外の企業の皆さんとコミュニケーションをとっている時も、夜遅くまで夢に賭けた様々な仲間達とのブレストの時も、インターウォーズのメンバーやスタッフとの居酒屋談話でも、常に前向きで明るい。エネルギー溢れる起業家独特の波動を持って人と接し、多くの人を元気にしてゆく人間力を持っている。

長澤社長は、昭和35年、新潟県東頸松之山町の旅館の長男として生まれた。高専を卒業後、ソニーの下請け電気部品メーカーに就職、アメリカ勤務を経験。そして勤務先倒産、これを機に、19歳のころから起業家になりたかった『夢を掴むチャンス』だと捉え、1988年個人企業として創業した。

スタート時は、2年で売上10万「かあちゃんのヒモ暮らし」(本人談)。黒字まで5年程かかり、92年株式会社となる。土砂崩れが起きるまでの本社オフィスは、廃校となった保育園を活用し、なんと157坪で月額家賃3万円!(これもまた、彼ならではの技である。)

また、地元の温泉旅館で夕方から働く女性の皆さんを日中パートで起用して、コストを抑え、独自の技術による携帯関連ソフト、ハードを開発、製造、販売し注目されるようになった。地方のハンディを、逆に優位性に変えている。

仕事を終え、長澤さんと時々酒を交わしながらの会話は時空を越えた話に展開し、飲み終えた後、エネルギーの余韻が残る。今回の本社の土砂崩れ災害を、一回り大きな本社に移るチャンスだと、某大手企業の工場跡地へ即断して移転した。

どんな逆境に立っても、ポジティブに捉え努力している経営者は、自らの道を切り開きピンチをチャンスに変えてゆく。長澤さんの経営感は机上で学んだものでなく、逆風にさらされ追い詰められた時々に修得してきた凄みと強さを感じる。

ポジティブな思考と強烈な思いがあれば、必ず道は開けると確信した。

コラムを毎月メルマガでご購読