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コラム

第58回

「桧原村」

過日、東京の秘境、桧原村に行った。運良く、隔年の柏木野の神社祭礼日に出会い、伝統的な神楽舞いを観た。

隣に居合わせた女性が、「あの壇上で舞っている男の子は、家の子で今年の代表で選ばれたんです!」そして、「村では、神社の祭礼に向け、子供も大人も伝統ある舞いの練習をし、特定の人の評価でなく参加者全員による互選によって、晴れの舞台の参加を得る慣習がある」と誇らしげに教えてくれた。

日頃見ることのない、神楽での優雅な演舞に、忘れかけていた幼い頃にタイムスリップした思いがした。

以前、ディズニーランドの仕事に携わっていた際、毎年”The Spirit of Tokyo Disneyland”という称号を与える制度を知った。

この賞は、年間訪れるお客様(ゲスト)に対し、ディズニーランドスピリッツである「ハピネスを提供する」ことを実践したキャスト(従業員)を称える賞のことを言う。

その賞の人選は、従業員達による互選に委ね、キャスト同士が、共に働く仲間で頑張っている人を称える「recognition 」評価・認定の実践をしている。

選ばれたキァストの胸には、シルバーピンの上にミッキーのロゴがつけられ、最高の名誉となる。そして、今では、勲章の習慣は一つの文化となった。檜原村で見た舞に、時空を超え、共通のモチベーションスピリッツを感じた。

混沌の時代の今、人と組織が生きるあり方に対して、あふれんばかりの情報や、さまざまな価値観が交錯し、憶測や悲観的観測が飛び交っている。いったい何を信じ、来るべき時代をどう読めばいいのか?見定め、決断してゆくことが難しくなってきている。

桧原村で見た夜空の星は身近で、人と宇宙がこれ以上近づいてはならない限界のように思え、先人達が育んだ神社を守る文化を継承している村人達の姿に、「心の尊さ」があった。

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