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コラム

第113回

「MONET」

過日、話題になっている黒川紀章氏設計の六本木新国立美術館に出かけた。

クロード・モネの作品が、世界から一堂に集まっており、昨年も倉敷の大原美術館で出遭った「摘みわら」を始め、「睡蓮」「日傘の女性」「雪の朝」「サン・ラザール」「ポプラ並木」「ルーアン大聖堂」といった、生涯の代表的な名作が揃い、モネ好きな私には、濃厚な時空を過ごすことができた。

モネの絵は人の心を、穏やかな気持ちにさせてくれる。モネは、「光の画家」といわれている。時間や季節と共に移りゆく光と色彩の変化と、一瞬の水・空気・煙・霧を描く画家は、他に見当たらない。独自の唯一無二の画家である。

今、私達は、情報テクノロジーの社会の中で生きている。すべてがスピードアップし、しかもグローバル化、IT化が正しいといった価値観が、脅迫観念のように浸透している。美術館で観る絵は、長い時間をかけて、描いた作品ばかりである。

一枚一枚の絵には、時計では計ることのできない作者の時間(思索)があり、完成してからは、多くの人々に見つめられて時間(歴史)が、重なってくる。そのせいか、見終えた後は、密度の濃い時空を旅したような、得した気分で、いささかの疲労感にも、心地よさを感じる。

先月、書籍を出版させていただいた。自らの考えや想いを、200ページの紙面に言語を通じて表現してゆくことは、その言葉に様々な思索を巡らすことになる。これまでの経験から気づいた価値感の表現であり、自己の人生観との対面でもあり、社会との呼吸を感じる時間でもあった。

自己の言語表現は、企業経営においては、構想や決断の基準に現れてくる。時空を超えても、色あせないアートなビジネスモデルの表現が、人の心に届き輝きつづける。

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