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コラム

第144回

「希望の年に!」

昨年はこれまでにない世界的なパラダイムシフトにより、人々の意識革命が起こり社会の枠組みが大きく変化した年だった。

過日、お会いした中国人の経営者から次の様な話を伺った。
「現在、中国の企業では日本の企業の様な終身雇用習慣も、年金制度も、失業保険も、医療保険もほとんど未整備です。だから自分や家族を養っていくには、必死になって一生懸命働くんです。中国人が企業に求めるのは、自分を守ってくれる事ではなく、頑張った評価として職場の確保と報酬、そして自分の成長の場です。

その結果、中国は過去30年に亘り、年に10%成長してきたのです。このスピードに追いつけなければ生き残っていけないですよ!自分の実力を高めれば、その代わりチャンスはいくらでもあります。今の中国人の一人当たりの賃金は、日本の10分の1にも満たないかもしれない。しかし、今日より明日、少しでも豊かになる為に、必死に皆働いているのです。」

かつて、私達の祖父母や両親は、今と比較してとても貧しかったが、笑顔と、明日への「希望」を持って頑張っている姿があった。今の日本人に欠けているのは、先人達の明日に向けての希望を持った起業家精神なのではないかと、中国人の経営者の話を聞いて思った。

デフレ、円高、株安、成熟化、高齢化、GDPの低下、50兆の赤字国家、リストラ、年収ダウン、日本経済の悲観論、閉塞ばかり見聞きする現状の話を聞いて、憂えていても何も始まらない。

日本は第二次世界大戦後、先人達の頑張りによって奇跡の復興を遂げ、世界第2位の経済大国となった。株も土地も時価でアメリカを上回り、一人あたりのGDPは世界一になったことがあったことを、今でもよく覚えている。しかしその後、80年代半ば頃から今日まで、20年間ほとんど成長していない。その間、中国、韓国、インド、ブラジル、インドネシアをはじめ世界の他国は成長している。

昨年政権交代し、国民は新たな政権に期待し、新たな光を求めている。しかし、私は、多くの人が「お上」に頼っているから、今日の現状を国民は招いてしまったことを認識すべきだと思う。また、選挙の投票にも行かない人が、国に頼ったり、批判している姿は、滑稽に思えてくる。企業の経営者も、一人ひとりの個人も、経済的に第二の敗戦をした現状を直視し、グローバル社会とは、一人ひとりが人任せでなく、自分達の力で競争して勝ってゆかなければ未来がないと認識すべきだと思う。

元々日本は、資源は無い国であり、豊田佐吉さん、松下幸之助さん、盛田さん、本田さんはじめ多くの先人達の起業家精神によって、世界を相手にビジネスを展開し、繁栄してきた。
しかし、資源は有限であり、もう後進国から安く買えることはないことを、認識した上で、これからに臨まなければならない。

今回の世界同時金融危機は、グローバルな規模での混乱で枠組みが変わり、これまでの一時的な不況とは種が違うと私は思う。そして、目線を変えると、成熟化社会、グローバル化社会の中の至るところで機会の窓が大きく開いている。

 行き過ぎた内向きの価格破壊や、人減らしによって企業の存続を考えるのではなく、今こそグローバルな視点で、新たな社会の本来求めているニーズやドメインに進出してゆくことが肝要だ。そして、志を持った起業家と共に、一人でも多くの人が勇気と希望を持って、他人任せでなく頑張っていくことに、未来の私達の幸せが見えてくると思う。

今後もできる限り機会を創り出し、一人でも多くの雇用を創生するチャレンジをしてゆきたい。

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