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コラム

第148回

「イントレプレナーの相関ネットワーク」

過日、マスコミによく登場する事業再生のプロの友人と会った。昨今の深刻な経済で、「歴史のある中堅企業や、国内に取引先の多い企業からの相談が多く、資金繰りを始め、困難なテーマが多く異常に忙しい」とのことだった。

これらの企業に共通していることは、「これまで順調にきていたが、売上げ拡大にこだわると必ず利益率が悪くなり、規模拡大に走ると必ず顧客志向が薄れ、利益確保に走ると、取引先や社員が離れ、窮地に追い込まれ、その結果資金援助をして欲しい」とのこと。

この話を聞いて、おかしいと思ったので、経営者の方々に、「今、私たちの存在している日本は、成長から成熟化社会に移行し、これまでの拡大路線や、本業回帰だけでは通じないことに気がついていないのではないか。

また、本来リストラは「事業の再構築」という意味であるが、それを勘違いしているのではないか。ダーウィンの進化論が、強いものや強大なものが生き残るのではなく、変化に適応したものだけが生き残るように、企業経営も環境に適応した企業のみが生き残っていく。本業を見直し顧客を創造するイノベーションや、新たな収益を生みだす事業を創っていく会社でなければ、今後ますます淘汰されていく。だから、今、次世代に通じる収益エンジンを創らない延命処置では、また近い未来に危機を迎える!」と、申し上げた。

新たな事業収益モデルを創ることは簡単ではない。米櫃の中に、米と水がある間に、時代を洞察し、経営資源や事業シーズを棚卸しして有効活用し、概念を変え、ハイブリッドコンセプトでアジアマーケットを始め、新興国を包含した戦略を描くこと。そして、戦略を実行する起業家を発掘育成することで新たな収益モデルが創生される。いち早く手を打っていかなければ、企業の未来は見えない。

この10年で、500万社あった企業が400万社強になり、国の税収は激減し、支出は収入の倍を超え、国債の価値が先々見えない。未曾有の不況で、現状のままでは、さらに企業は淘汰され、今にも倒れそうな企業には、よほどのメリットがなければ救いの手を差し延べてくれる企業はない。

日本経済再生のシナリオは、「新しい産業、企業、ベンチャーを創生し雇用を創造してゆく以外に道はない」と、これまで申し上げてきた。早く手を打たないと間に合わない危機感が、日に日に増してくる。

グローバル社会に視野を持ち、気概を持ったアントレプレナーの勃興が、今の日本経済から脱皮する唯一最大の解答だと私は思っている。そして、日本スタイルのアントレプレナーの増大は、企業内の埋もれた事業シーズを活かした、イントレプレナーの発掘・育成にある。

そして、イントレプレナーが成功する新たな視点として、「相関ネットワーク」を持たなければならない。人も企業も、一人では生きてゆけない。分散型ネットワーク社会の中で勝ち残ってゆくには、「何処の誰と組むか」が、国も企業も人も、いつの時代にも共通する成功の条件ということを、歴史が証明している。

キーワードをたたいて、情報検索しただけのような、インターネット上の繋がりではなく、志を持って共感する生身の人間同士が、本気で議論を重ね、共創しながら世界に通じる本物の事業を創造してゆくことが、未来の扉を開くと思う。

小国と言われ資源の無いシンガポールが、今や世界に冠たる経済国家になった。シンガポールでは、志を持ったアントレプレナー達が知恵を絞り、情報や技術、システムといった、目に見えない資源によって、国や企業や人を豊かにしてきた。

こういった国の人々との「相関ネットワーク」が、これからの日本の豊かさをもたらしてくれると思う。当社は、この4月から16期目を迎える。初心を持って思いを形にしてゆきたい。

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