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コラム

第149回

「営業力のある人」

過日、或る会で、「営業力のあるビジネスが上手な人」の人間像の本質を、誤解している人が多いように感じた。同席した人達の話を聞いていると、「言葉上手」「勧誘」「自己利益」「したたか」といった理解をしているのではと思えた。本質を勘違いしているのではないだろうか。

私は、仕事柄、多くの営業力を持った経営者とお付き合いしてきたが、商売や営業上手な人達は、例外なく「信頼できる人」だと確信している。なぜなら、こういった人達は、相手の利益になることを提案してくれるプロの人達だからだ。

まず、信頼できるビジネス上手な人達は、こちらの話をしっかり聞き、その後「問題解決してくれる世話好きな人」が、共通項である。目先の自分の利益だけを求めるのではなく、相手の利を優先し、本当に喜んで貰うことで自分の利につなげる人達だ。

そして、さまざまなリスクに投資をする。特に、人に投資支援をする人が多い。一見メリットがないことにお金をかけ、損をしていることもある。しかし、そのことが将来に大きな価値をもたらし果実となることがある。様々なセミナーやパーティに参加することも、顧客の利益を考え損をすることも、投資である事には変わりない。

一方、日々夜中も休日も関係なく、気合いや根性で攻め立てる営業の人達は、相手に嫌われても関係なく、相手の現状や利益は無視して自己の利益だけを求め、自分本位で物事を考える人達が多い。

先週の日曜の夜、家族で夕食時に、不動産会社の営業マンから電話がかかってきた。「新たないい物件が出たので買わないか」との内容であった。「今、夕飯を食べているので」と言ってもおかまいなしで説明してくる顔の見えない人に、間違っても、住宅という大きな買い物をしようとする人はいない。

成熟社会でのビジネスマンは、相手の利益になる提案のない人達は、信頼されずリピート顧客を創れず、結局淘汰されていくと思う。

営業できない人は、投資感覚がなく、「買って欲しい」と思うのは、自分の理屈であり、目の前の数字だけを追いかけ、本来の顧客利益を見失って、自己の利益を投げ出しているように見える。

成功しない企業のビジネスモデルや経営者に共通して言えるが、それは、相手に利益をもたらさず、自分達がリスクをとらないビジネスモデルで行動判断をしていることである。

成熟化・格差拡大社会に、企業も個人も、相手の利益になる提案をすることによって、自らの利を生まなければ、ウィンウィンの関係を構築できずにレゾンデートル(存在理由)がなくなり、やがて淘汰される。

一代で資産を創った人に共通していることは、リスクに挑戦し、投資を顧客に向けていることだ。一方、淘汰されていく人は、自分のことしか考えずに、行動しないで消費とお金に執着している人達のように思う。

「投資をしない、学ばない、努力をしない」ではなく、人や相手企業や社会の利益を考え、投資行動をする人が、「ビジネスが上手く、営業上手な人であり名経営者になる」、と言える。
相手に喜んでいただいた時、自分の存在価値が出、信頼の輪が広がり、ブランドとなって輝いていく。

人は、会社と社会と時代に役に立って、はじめて人としての喜びを感じる。自らの考えで主体的に活動し、貢献してこそ、存在を感じ、人生を豊かにすることができると、私は思う。
一人ひとりが本気で相手に対し尊厳を持って提案していく、「営業力のある人」が、会社を変え、社会を変えてゆく。

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