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コラム

第159回

「円高」

相変わらず円高の状況が続いています。円が強くなっても、経済は成長しないので、メディアは危機感溢れる情報を流します。本来、自国通貨が強くなるのはいいことのはずです。
「円高でGDPが下落」という変化は、いったい何を意味しているのでしょうか?

円高になると、経団連などをはじめとする経済団体が国に円安施策を求めてきます。これまで、日本は輸出貿易利益で成長してきた国だけに、輸出型の大企業にテコ入れが行われ、保護政策が実施され円の安定を図ってきました。

今、起きているのは円高という現象です。その原因はドル安・ユーロの暴落から、米欧国での経済先行き不安とギリシャ危機によって、行き場のない国際資本が「避難先」として円に流れ込んできた為替の結果といわれています。

私は、円高が生み出すものは、国内雇用の消失にあり、意味する為替通貨戦争の本質は、「雇用戦争」にあると考えています。

円高や高法人税率で、国際競争力を求めて、大手企業は生産も販売も海外移転し、グローバル展開を推進していかなければ存続できないと考えています。そうなると、当然国内の雇用は維持できなくなります。多くの中小中堅企業や大手企業もグローバル社会に対応できないでいると、かつて明治維新で武士階級が職を失ったと同じ状況を招き、中流階層のサラリーマンが働くステージを失ってしまいます。

今回の円高・株安で、企業と人々の生活の二極化に拍車がかかり、グローバル社会への適応の成否が、人も企業も問われています。

そして、この変化に対応できない企業のサラリーマンや公務員の皆さんが、会社組織や既得権益に守られてきたがために、「ゆでガエル」になり、会社に行けば給与を得られると錯覚している人達を生み出してしまいました。

人は、急激なインパクトには反応します。しかし、緩やかな目に見えない変化には反応しないものです。今や、日本のおかれている状況や事の大きさを自覚した上、この国がどうなるのかと悩んでいる暇はありません。

今のこのパラダイムシフトは、逆手に取り行動を起こせば、「不況空気」のリスクを跳ね飛ばす飛躍する機会でもあります。

これからの企業や人の選択は、今後訪れる新通貨システムへの移行と円高が崩れる流れのタイムラグを捉え、社会の先端にポジションを取ることにあると思います。

日本の今の空気感は、いささか自虐的に感じますが、過日、電車の中で出逢ったニュージーランドから来た50代の旅行客が、日本は世界一安全で、食事もおいしく、緑豊かで、笑顔の絶えない優しい国民で、あこがれの国だと目を輝かせて言っていました。

もっと誇りと希望を持って、自ら市場を創造し、一人でも多くの雇用を確保していきたいものです。

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