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コラム

第181回

「イノベーション時代の経営者像」

経営者には、創業オーナー経営者と雇用された経営者がいます。創業オーナー経営者は、株式の多くを所有し、主要なすべての意思決定を行います。雇用された経営者は、資本と経営の分離により、自社株のシェアは所有せず、経営の意思決定を行う専門経営者です。

創業オーナー経営者は、創業時から、何から何まですべて自分でやらざるを得ないので、結果的に会社の全機能に精通します。

雇用経営者の場合は、1つの所属部門に配属され、専門化された道を歩み、出世に価値をおいた調整型の社長になるので、経営全般を知る機会が少なくなります。創業者の姿を踏襲したコピー型経営スタイルになりがちです。

創業オーナー経営者の多くは、個人のお金で会社を立ち上げ、個人保証を銀行に求められます。その後、個人と会社が一体となり、会社の痛みも喜びもすべて自己のものとなります。

創業オーナー経営者は、会社の現状の痛みや危機意識を誰よりも持ち、「不確実な明日に向かって今、何をなすべきか」を考え、自らの全存在を賭けた決断をします。結果、これが戦略的意思決定の本質となります。
「戦略的」とは、与えられた問題に対して解決を図るという「戦術的」アプローチではありません。自ら問題を創り出し立ち向かう事に、本質があります。

持ち回りの雇用経営者の会社では、時々担当責任者任せで経営バランスが崩れ、不幸を招いてしまうケースがあります。環境変化に対応し、常に変化、進化し続けるために、経営者が交代する事に意味、価値があるという認識が足りないのかもしれません。

しかし、その意味、価値を認識させる事例が起こりました。
今年1月に、世界の写真フィルムのトップカンパニーだったイーストマンコダックが、経営破綻しました。一方、同業のライバル企業だった富士フイルムホールディングスの創業オーナー経営者ではない会長古森重隆氏が、業態変換で事業を存続発展させた手腕が世界から注目されています。

古森氏は、社長就任後、フィルム産業がなくなることを予測し、会社の経営資源を棚卸し、次世代の経営の収益源を徹底的に考え、その中から取り組む事業を「医薬と化粧品」に絞り、事業インキュベーションを実行し、会社を生き延びさせました。

古森氏は、雇用経営者でありながらも、「戦略的意思決定」を行う創業精神を持った経営者であると言えます。変革の時代の今、出世を求め仕事を管理する調整型サラリーマン経営者でない、創業型経営者が求められています。

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