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コラム

第192回

「大学発ベンチャー」

今年に入り、日本のIPO市場が活気づいている。6月11日、東証マザーズに創薬ベンチャーのペプチドリームが上場し、公開価格の数倍の初値がつき、時価総額が1,000億を超え話題となった。この事例が、IPO市場の活況を象徴している。

1980年代以降、アメリカでベンチャー企業が数多く誕生した。
スタンフォード大学で、学生のジェリー・ヤンとデビッド・ファイロが開発した検索サイトを、企業と共創してヤフーが誕生したように、大学と企業とのTLO(技術移転機関)によって、多くのベンチャー企業が誕生し、米国の原動力になっている。

注目すべきは、米国を代表するベンチャー企業の多くが、大学で生まれた技術をもとに起業していることだ。TLOは、大学の研究成果と企業のニーズを結びつけ、新しい価値と競争力のある商品を創り出す機会となった。

企業内での研究開発は、時間・コスト・社内規定・風土といった制約の中で行うだけに、新しい発見や独自の技術が創造されるケースは極めて少ない。

一方、大学の研究者や学生にとっては、自分の興味テーマを恵まれた環境の中で開発することができる。彼らが、企業ニーズとベクトルを合わせると、新規事業創出の原動力となり、事業につながる大きなパワーとなる。

米国のベンチャー企業に共通している強みは、特許を所有していることにある。特許はベンチャー企業にとって、競争社会の中で力強く生き抜く大きなファクターだ。

昨今、日本のIPO企業で注目されている企業群は、東京大学で開発されたミドリムシの株式会社ユーグレナや、ペプチド薬を企業と研究開発したペプチドリーム株式会社を始め、多くの大学発ベンチャー企業である。

現在、日本では20万人を超える研究者が大学におり、国家予算の研究資金が使われている。今後、日本の産学共同技術を企業に移転するTLOにより、大手企業とベンチャー企業が共創することで、新産業や新しい事業が創生、インキュベートされることに注目してゆきたい。

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