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コラム

第160回

「お経を唱える」

2500年ほど前、お釈迦様が人々を苦悩から救おうと苦行の末、悟りを開かれた。そこで、放たれた言葉は、お経となり、やがて日本に伝来し、今もって定着している。

何かの際には、必ずやお経を唱える行事が続いているのだ。お経の内容は、要するに、どんなにつらい事があっても、仏の言葉を信じ、敬う心を忘れずにいれば災いや苦しみから逃れることができる。という、時に励ましや希望を与えて頂ける物である。確かに、お経には不思議な力がある。

どんな方でも、何度も唱えていると一定のリズムと音調がある事に気づかれるはずだ。そして、いつのまにか、無になっていく。

唱えたからといって、すぐに何かの効果が出るはずもなく、自分の運命は自分が行動する以外ないのだけれど、それでも、お経が普及してから今日まで、沢山の方々の心を救ってきた素晴らしい言葉の集合体であることに変わりはない。

日本人が救いの言葉に出会ってから1500年経ったが、現代人の求める救いはなんなのだろうか。難病も次々と治療可能になり、体の不自由を補助する機器も開発され、健康寿命もどんどん延びて、事故や犯罪を未然に防ぐ技術も進歩した。そう、人々の幸せの為に人々は頑張った。

そうなのだ!人類の素晴らしいところは、大昔から、この世に生きた人が皆幸せに暮らして、満足して旅立つ事を望んでいるのだ。

にもかかわらず、この世は自分たちだけの世界と思いこむ、少数の欲深い人間の思惑で犠牲になる弱者が、世界中にいることが、現代人の心の苦しみと言えるのかもしれない。アンフェアは気持ちが悪いのである。

少し前から、エシカルという言葉がスタンダードになってきた事で、世の為、地球の為を考えた企業の価値が上がっているのも時代の欲求を表しているように思う。

先日、未上場にもかかわらず、石灰石から紙を製造している(株)TBMという会社や、古着を燃料に変えるグリーンアースインスティテュート(株)という会社等が、華やかなネットビジネス群の中、しっかりと注目され新聞に掲載されていたのも、その一つのような気がしている。

しかし、最も、驚異的な価値を出していたのは、電脳技術者集団?の企業である。なんでも、人工知能が勝手に学習していく仕組みとやらなんやら。

中味はわからないが、近い将来、なんでも知っているAIが、個々の人間の悩みを解消してくれる日が来るのは間違いないようだ。まったく、記憶する知識が必要な職業はAIに変わられるともいわれているし。

運動は無理かと思ったら、宙返りとか、完璧にこなすロボットもできたし、ロボットの肌等見た目もどんどん綺麗になるし。長生きしたおかげで、いろいろな進歩を実感させて頂いている。これから先、人類はどこまで、万能の神仏に近づいていくのだろうか。

しかし、人間は、それでも、これからも自分の信じる神様や仏様に祈りを捧げるのだろう。この信仰心ばかりは、技術の進歩に変わりはないと思っている。

あのジョン・レノンもスティーブ・ジョブズも、般若心経を唱えていたとか。音楽やビジネスの天才でさえも、いや、天才だからこそ、あの「何もない」という経文にsympathyを感じたのかもしれない。

2500年の歴史ある、有難き言葉のお経。何かの時には、読んでご覧になるだけでも、なにかが開けるはずである。

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