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コラム

第163回

「財布ってなに?」

と、小さな子供に聞かれているシーンを想像してしまった。

そうなのだ。最近は、乗り物もお買い物も現金を持たずに過ごせるのに、何故財布が必要なのだろうか。

この先ポイントカードや電子マネーの全てが統一されたら、端末一つ持てばすべての決済も明細確認もできるようになるのである。財布の存在はどうなるのだろう。

私の信じる財布と風水の関係はどうなっていくのだろう。等と考えるきっかけになったのが、お友達が新しく起こした会社の話からである。

その会社の事業内容は、端末でやり取りができる日払い給与の立て替えサービスだ。といっても簡単な事業ではない。現代の技術の進歩無くしては、またその技術を使う財力や信用性がなければ成り立たない。

しかし、彼は、あっさりと始めてしまった。もともと、証券マン時代の行動力と、会計士の知識を生かして、これまで関わってきた企業を上場や統合等、成功に導いた優れた人物だが、体制に身をゆだねる事に疑問を感じたらしく、数年前にコンサルタントとして独立していた。

以来気になる企業のサポート等していたが、要するに、自分のやるべきことを探す時間だったのだと思う。そして、ついに、見つけたようだ。これから、益々の活躍が楽しみである。

人間想いで、金融の知識が深い彼らしく、現場の人材確保に苦労する企業の一助にもなり、新たな金融スタイルでもある事業に興味が湧いたのだと思う。

おかげで、現代のお金の流れが気になったことで、時代はキャッシュレス社会になっているという事に気が付いたのである。そして今更ながら、電子決済なるものの進歩と国内の状況に愕然とした。

東京五輪に向けての政府の混乱ぶりも、小売業の方々の歯がゆさも改めて理解できた。そうなのだ。気が付けば、世界はもう、キャッシュレスが当たり前なのだよ。

旅行に行ってお財布を落としたり、盗まれる心配はいらない、身軽で便利で安心なのである。心配は、電池切れと故障だそうだが、街の中ならなんとでもなる。

むしろ、これから用心しなければならないのは、サイバー犯罪に関する防御策だろうけれど、そういう事は専門家にお任せするしかない。

私なんぞは便利に使わせて頂いて、目に見えない方々に日々感謝している。現金決済の場が激減していく毎日の背景は、あらゆる仕組みが充実しているからである。言い換えれば、表に出てこない現場の方々の日々の労力のおかげなのだ。

そういえば、その便利さを毎日のように感じさせて頂いている、あの「Amazon」さんのところでは、レジを通さずにお買い物ができる仕組みを開発し、すでに社内で試行中だそうだ。

入口で端末をかざし、欲しい物を手に入れてそのまま帰っていいという。ということは、近い将来、コンビニやスーパーに携帯だけ持っていく日が来るのだろう。

キャッシュレス化はお財布の未来を奪ったのだ。

「おばあちゃん、お財布って何?」

「昔は現金という、物に交換できる紙や金属やカードというのがあって、出かけるときにその大事な物を持って歩く物入れがあったんだよ。それはそれは、皆とても大事にしていたんだよ。」

とかなんとか、幼子に言う日が来るのも近いのである。

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