第168回
「商売とは」
店舗関連の仕事をしている同年代の友人達までもが、買い物はネットでしているというので、「実店舗で買ってよ、いつも行ってるんだから」というと、「だって欲しい物置いてないから…。」と寂し気に語る。そんなはずは無い!では私が探す、と意気込んで、いくつかの大型施設内のお店を巡ったが、本当に置いてない。
確かに、かなりの年配になったかもしれないが、私達世代は、ファッション雑誌に囲まれてというか、むしろ脅迫的に流行を追わされ続けた世代なのだ。
その世代の感覚に合わせてくれてもよさそうなものなのに、どういうマーケティングなのかと寂しくなる。欲しい感覚の物は、限られた街の若者向けの店舗だったりするので、女性はともかく男性の年配者には気軽に入りにくいし、そもそも行く時間も無いというわけだ。
結局、欲しい服や雑貨も、ネットで買うしかないね、という事になってしまった。
そして、実店舗側はというと、販売スタッフにやる気があっても、商品が無かったり、商品の説明も出来ない人が店舗で販売を任されていたりと、情けない事ばかり目につくのである。
「うちの店わぁ、すごぉーく年取った方もぉ、買いにみえますよぉ。年齢とか関係ないからぁ。」と、キャピキャピした可愛いお嬢さんに慰め、いや、むしろディスられている気持ちになる店や、逆に、かなりの大ベテランさんに、「絶対似合うよ、買わなきゃ損よ」等と、絶対着ないような服を強引に勧められる店があったりと、最近の店舗での購入は、自分を見失わない気合と根性がいる。
だから、通販系はドキドキも照れも、気合も必要ないから楽なのであるが、その代わり、実際に到着してから残念な事は多々ある。痛し痒しとまではいかないが、悩みどころだ。
しかし、物が溢れているのに欲しい物が見つかりづらい理由は何かと考えていた最中。私が敬愛するW氏の著書にヒントがあった。
そもそも商売とは「お客様は誰なのか、何を本当に求めているのか。それを具現化したもの(商品)を開発したり品揃えしたりして、納得する価格で提供する事」だと。
そうだった!創業者の思いは、お客様から始まっているはずなのに、だんだんと自分達の専門性を過信したり、組織の都合が重なり合っていくうちに、少しずつずれて亀裂が入ってしまい、どんなに大きな企業でも滅びる原因となっていくのだ。いつの時代でも、商売の基本は変わらないのにである。
だから経営者ばかりではなく、幹部の方たちも、同じ危機感を持つべきなのだ。「うちの会社は、本当に『商売』をしているのか?」と常に問うべきなのである。
そうして、経営者や株主ではなく、お客様に視点を合わせている限り、その会社は価値があり、その価値を維持する営業力があれば存続し続けるのである。
それにしても、実店舗での買い物をもっと楽しく出来る方法はないのだろうか。通販ビジネスが定着した今こそ、実店舗の醍醐味を味わえるなにかがあるはずなのだ。カエルパルコのように、スタッフブログと連動した通販サイト等いい試みである。
そういえば、最近、10年ぶりに買い替えたポットの販売員さんは凄かった。私の求めている条件に合う品を的確に判断し、抜群の感じよさで勧めてくれた。なんと、ものの3分で良い買い物ができた上に、日々使用している時も気分がいい。こういう人物に出会えるのが、実店舗ならではの良さなのだ。
ともかくも、競争相手が溢れている今だからこそ、自分の商売を再考するべきだ。お客様は誰か、何を本当に必要としているか、それが開発できるか、それを適正な価格で販売できるか、そして、販売は誰がするのかも大事である。
顧客が個人であろうが、法人であろうが、最後は現場の「人」次第なのだから。