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コラム

第173回

「脳をかたくさせないために」

物覚えが悪くなったとか、直ぐに忘れるとか、人の名前を思い出せないとか、とかく人は年齢を重ねるごとに、もしかしたら…。という恐怖を感じながらも、年だからという人体の抗えない変化に全ての責任を委ねて胡麻化している。勿論私もその一人なので、「もうしょうがないもの、年だから」と言い訳していたのだが、なにかと気の付くメンバーから、脳との付き合い方を伝授してくれる本を頂いた。

常日頃、「年だからぁ」となんの努力もしていないのを見抜かれたごとくの内容が書かれていた。そもそも脳は、怠惰に出来ているという。なので使わなければ、楽な方、休む方に流れる。

基本、人類は幾人かの向上心の塊のような人々のおかげで進歩しているが、殆どの人間が楽な方が好きなので、より便利な物を手に入れては、より快適な生活をしている。つまり、よけいな苦労、疲労は避けたい。そして、それは、脳の機能に関しても同じことなのである。

自分が考えなくてもいい環境にいれば、脳は、覚えることや、その情報を基に考えるという行動をやめてしまうのだ。だから、勉強目的以外でテレビを見続けていたり、単純な作業のみでパソコンを眺めていることが続くと、脳は年齢に関わらず固まっていくのだそうだ。

はっきりとした病名が無い健忘や思考停止は、脳を働かせていないという証拠なのだ。思い当たる節が沢山あったので、早速生活スタイルの変更を試みている。

例えば、

面倒だと思っている事を率先してする。(しようと努力する。)

なんとなく避けていた、緊張感のある人と会話を試みる。(時間は短くても)

外の景色や行きかう人に意識をおきながら散歩する。(買い物も含める)

テレビやパソコンの画面は長時間見ない。(1時間毎に違う事をする)

眼を良く動かして、周囲の情報も得る。(とりあえず、眼球運動をする)

等々。体の機能を積極的に動かすということである。

人間は、頭だけではなく、全ての機能を存分に使うように天から身体をお預かりしている。その体や知識による経験も使わなければ、退化していくという事だ。例え体が弱っても脳が活発であれば、なにかしらの役に立つのである。

私も、インキュベーションに関わって、あっという間に20年以上過ぎてしまった。20代、30代で出会った方々が、上場企業の創業者や敏腕経営陣として40代、50代になられて、当たり前なのだが、久しぶりにお会いすると驚くほど、それぞれ貫禄も風格も持たれてきた。

面白い事に、ご立派になられても、話し出すと昔の若者のままである。こういう事を確認できるのも、長生きの醍醐味である。

それにしても、強い想いで自分の目的を達した人間は、魂が老けないようだ。脳を甘やかさない一番の方法は、体の機能を使う事は勿論だが、その原動力になる目的に対する信念や覚悟なのだと、私なりに納得した。

おじさんやおばさんになっても、キラキラした瞳で、まだまだ新しい事に挑戦していこうと、いくつもの先を見ている。

こんなキラキラ中高年が、もっと沢山世の中に出てきてほしいので、脳を固まらせないように努力しつつ、より一層のお節介を焼きまくろうと思っている。

もう少し、長生きの醍醐味を味わいたいもので。

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