第203回
「投資と人材紹介のインキュベーター」
IPO市場が、活況になっています。06年の155社には及びませんが、今年度70社を超えそうな勢いです。こういった流れから「起業時の投資リスクマネー」の動きが、着実に変わり始めています。
稀代の経営者スティーブ・ジョブズは、アップルの創業時、「投資がほしいなら、マーケティングと物流がわかり、事業計画がつくれる人をパートナーに迎えなさい」と、投資家のドン・バレンタイン氏に迫られたと伝記で語っています。
「バレンタイン氏から、物流や財務のプロ人材、マイク・マークラを紹介され、その後20年、欠くことのできない存在だった」と、ドン・バレンタイン氏に賛辞を送っています。
企業内起業も、ベンチャー企業においても、起業家の才能とリスクマネーは必要です。しかし、それだけでは起業を成功に導くことはできません。起業時は、様々な課題に遭遇します。起業のメッカ、シリコンバレーやサンフランシスコでの起業成功物語には、必ずインキュベーターの存在があります。
彼らは単にお金を投資するだけでなく、人材紹介やインキュベーションノウハウ、事業戦略、マーケティング支援などによって起業家をバックアップし、成長に導いています。
日本には明治維新の頃、王子製紙、東京海上火災保険、東京ガス、サッポロビールなどを始め日本を代表する企業を500社インキュベートし、資本主義の父といわれた渋沢栄一氏がいました。
渋沢氏は、庶民から集めたお金で第一国立銀行を創り、起業家に投資するだけでなく、その会社に必要な技師・商人・職工などの人を紹介していた史実があります。
日本は、失われた20年といわれながらも、「日本ほどお金のある国はない」といわれています。デフレ経済からの脱却の道筋は起業立国にあり、リスクマネーの流れができつつある現在、ボトルネックとなる最大の要素は人にあります。
起業家と共に歩む人材を紹介するドン・バレンタイン氏や渋沢栄一氏のような存在が求められています。