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コラム

第260回

「藤田田さんの法則」

2000年代に入る頃から、日本はデフレに見舞われ「失われた平成の時代」と呼ばれている。個性の強い異能経営者たちが続いた70年・80年の時代が日本の繁栄期であり、この時代を牽引した起業家達が、今、注目されている。日経ビジネス特集記事「激動の50年」で、70年代を代表する異能経営者で日本にハンバーガーを普及させた日本マクドナルドの創業者の藤田田さんが取り上げられており、「物事の中に潜む法則性を見抜く力が独特」との、私の藤田さんに対する人物評が取り上げられていた。

1971年7月、銀座の第一号店からスタートした米国のファストフードは、ライフスタイルを変え、半世紀経った今も、日本を代表するファストフードのポジションにいる。

未来を見抜いた慧眼を持つ藤田さんとの会話は、刺激的で多くのことを学んだ。

当社の応接室を始めとする各ルームには、スペースの坪数と平米数が記されている。
「ビジネスは、計数マネジメント無くして成り立たない。時間や空間を、数値で体感することが大切だ。スペースにかかるコストを肌感覚で知らなければ、数値の羅列でしかない」と、藤田さんがよく語られていた。

藤田さんは、「78対22に分割された宇宙の法則を外れたら金儲けはできない。社会はこの法則で成り立っている」「人の行かないところに花が咲く」「戦略は、シンブルに一言で伝えられるものでなければならない」「お金を借りたい人より、貸したい人の総量が多い。世の中金持ちが、お金でお金を稼いでいる」「ビジネスは、女と口を狙え」「限りなく短時間で商品を提供することを考えろ」等、時間と数値を巧みに組み合わせた独自な経営観を持ち、私が「いつまでに必要ですか?」と尋ねた際、「昨日」といって、その切迫した状況をユニークに表現していた。

未来を見据え、「勝てば官軍」とする経営姿勢はゆるぎなく、勝つ事に執着し、即断即決をする。あてがわれた仕組みではなく、オリジナルの仕組みや風土を創り、社員や取引先に対する敬意を忘れない。なによりも、徹底したリサーチと現場視察を怠らないので、物事に潜む本質を誰よりも見抜く慧眼を持っておられた。

よく、藤田さんから突然の連絡があり、様々な相談や依頼をいただいたが、私の要望も快く受けてくれた。紹介した方に親身なアドバイスを頂き、感謝している。早口の関西弁で楽し気に語られる藤田さんの声を思い出す。

最後にお会いしてから18年。藤田さんのような異能な起業家にはお会いすることが無くなった。平成の時代、日本はインターネットで敗戦した。戦争を体験し敗戦国である事をバネに、戦後の復興を生き抜いた藤田さんのような経営者が求められている。

未来を見据えた型破りな藤田さんから学んだことを、一人でも多くの起業家に伝えていきたい。

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