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コラム

第261回

「成長続ける企業に共通点」

「異業種交流会501」が、今年19年目を迎えた。この会は近代経済の父と呼ばれた渋沢栄一の精神と実績にあやかり「501社の企業を創生し、地域を活性化していきたい」というNSGグループの池田さんの呼びかけでスタートした。

東京と新潟で開催しており、私は東京の会長を務めている。東京と新潟合わせて262人の会員組織となり、創業時のディー・エヌ・エー(DeNA)の南場さんを始め、250人を超えるベンチャー起業家を迎えて交流を深めてきた。

立ち行かなくなったベンチャー企業もあるが、DeNAやメンバーズのように力強く成長し続けている企業には共通点がある。試行錯誤を繰り返し、事業の基軸を変えて強力な基盤を持つ企業へ変貌している。

DeNA はパソコン向けのオークションサイト「ビッダーズ」を立ち上げた。その後、成長の主軸を携帯電話向けの「モバオク」や「モバゲー」にシフトしてモバイル事業が拡大し、数千万人の顧客基盤を持つ企業となった。現在は、モバイルゲーム事業の世界展開や任天堂と提携した新作スマートフォンゲームアプリ、自動車関連事業を展開し、傘下に横浜DeNAベイスターズを持つ2千人を超える企業へ変貌している。

デジタル技術は産業の構造を根本的に変え、勢いよくスタートしたベンチャー企業の多くが、これまでの事業の延長では先が見えなくなる。起業は、様々なピンチに出合う。その後、変貌していくことができる企業は、「こんな世界を創りたい」と、経営者が徹底して「パーパス」を社員に語っている。パーパスとは、企業や組織や社員一人ひとりが社会において、なぜ何のために存在するのかという「存在意義」のことだ。

人口知能(AI)を中心とした技術革新でビジネス環境が急激に変化する中で、パーパスはミレニアル世代組織の求心力だ。組織と社員のパーパスを融合させるマネジメントが、環境変化に柔軟に対応する戦略の実現を加速させている。

さらに、革新を求める起業家経営者は人的資産を最大限に活かすことを経営の要点としている。そのため誰よりも社員を深く理解し、誰に新たな事業起こす仕事を任せ、どのレベルまで要求するかを判断する。社員の力を精一杯引き出すことに時間とエネルギーと資金を費やしている。経営者の直下で事業を立ち上げる機会を得た社員は、事業の実現に熱狂する。人は生き方が定まった時、圧倒的な力を発揮する。

私は、インキュベーション会社の経営者として多くの起業家に関わってきた。ベンチャーから変貌して成長を続けている起業家経営者が率いる企業には社員のアイデアを生かし「次世代を担うビジネス」に磨き上げる構えがある。企業の成長の源は、いつの時代も人的資産を最大源に生かす企業に宿る。」

平成が終わり、令和という新しい時代が始まった。令和に居合わせた経営者は、内部留保資金を有効活用し、社内起業家にもっと機会を与え、未来の扉を開くイノベーションをする決断が必要だ。

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