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コラム

第271回

「メガスタートアップ テラモーターズ」

当社のエントランスに、電動バイクが飾ってある。10年前、「アップルを超えるメガベンチャーを立ち上げたい」と語った起業家が開発した製品だ。電動化の進展でバイクや自動車のつくり方が変わり、大きな資金や工場を持たないスタートアップでも生産できるようになった。

この電動バイクを開発したテラモーターズは、設立当初から世界への挑戦を目指したモノづくりのメガスタートアップだ。日本では数少ない起業家のグローバルな心意気に惹かれ、創業時に投資させていただいた。渋谷のとあるビルの四畳半からスタートし、わずか2年で国内シェアトップの電動バイクメーカーとなった。

失敗を繰り返しながら、現在はインドを主軸に、アジア諸国に拠点を設け、電動バイクと「オートリキシャ」と呼ばれる20万円程の電動三輪たくしーを製造・販売している。テラモーターズには、世界で戦うビジョンに引き寄せられた経験豊かな大手企業のOB、海外を志す異色の若いメンバーが集う。その姿はまるで「梁山泊」だ。

設立時、「若者をインスパイアして世界で勝負することや、リスクに挑戦することが当たり前の日本社会の実現を目指す」旗印を掲げた。このダイバーシティに満ちたチームは、驚くべきスピード感を持ち、圧倒的な量の仕事をこなす。

際立つのは徹底した権限委譲と、1人で複数の仕事をこなすマルチタスクだ。大手家電メーカーからテラモーターズに参加した上田晃裕史は2015年3月にバングラデシュへ赴任後、複数の仕事を見事にこなし、1年で10憶円規模の成果を出した。アジア4ヶ国の統轄を兼任する現地法人の責任者を経て、今年2月に代表取締役社長へ就任した。

アジアでは急激な都市化でガソリン車の交通渋滞による大気汚染が深刻化している。各地で気候変動が加速するなか、持続可能な社会へ向け国と企業の責任が問われている。インド政府は2025年までに150㏄以下のすべての二輪者をガソリン駆動から電動に切り替える目標を掲げる。

テラモーターズは電動バイクのバッテリーの遠隔管理のほか、走行データを全地球測位システム(GPS)で把握するなど「IOT」を活用した「環境に優しい交通インフラの構築」を目指している。「スピードこそ最大の経営資源」と世界を駆け回るテラモーターズの起業家集団の姿は見ていてハラハラするが頼もしい。

世界は今、新型コロナウィルス感染拡大で強制的に国が分断されている。コロナ後、グローバル化を推し進める日本のモノづくりスタートアップが、かつてのソニーやホンダのように海外市場を切り開けば後に続くグローバルスタートアップの道も開ける。

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