第169回
「大人の品格」
先日、ある紳士からお礼状が届いた。封筒を開けると、美しい文字と言葉で綴られた、流れるような文章に釘付けになり、感動を覚えた。そして、頭に浮かんだ言葉が品格だった。それが切っ掛けで、品格溢れる方々を回想したところ、共通点を見つけた。
私ごときが品格を語るなど罰当たりと承知の上だが、今更気が付いた私だからこそ、働き盛りの方々に伝えておきたくなったのだ。
というのも、品格は、大人になればなるほど、年を重ねる程必要になる。
人生100歳時代も普通になったので、ここでいう大人は、50歳過ぎてからだ。人生は50歳から75歳までが林住期という人生のクライマックスの時期だとも言われている。まさにこの期から、品格の有無が人物の器量を表すといっても過言ではない。
そして、自然に滲み出る品格というのは、財力や付け焼刃の知識や、外見では補えない。品格とは、あくまでも精神の美しさであり、鍛錬された能力の賜物なのである。という事は、より早くから鍛えておいたほうがいい。精神の鍛え方の第一歩は簡単だ。怒らない、恐れない、哀しまない、ひがまない。常に周りに感謝を忘れない事である。
そしてこの時期に何か、仕事以外の自分の武器(才能)を磨いておくことだ。それはもう、なんでもいい。自分の仕事以外の好きな事、興味のある事でいい。鍛えた心と、得意分野を一つ持つことで、充実した林住期を過ごせるのである。
大人になっても品格を感じない方に共通するのは、極端に異性を尊重しない。また、家族、友人、仕事仲間の事も本当の意味で大切にしていない。そういう方は、お金儲けが上手であっても、著名人であっても品格があるとは思えないのである。
といっても、日々充実されているのであれば、品格等気にしなくてもいい。自分の人生なのだから、自分が満足していればいいのだ。
しかし、少なからずとも、私の狭い世間の範囲でも、この品格の差による人生の悲哀を痛感せずにいられないのである。繰り返すが、品格は大事なのである。
何故ならば、人生のクライマックスという林住期の後は、遊行期なるものが来るのだ。75歳から100歳、もしかしたら、もっと長く…。
この時期、人は一体何をするべきなのだろうか、何が出来るのだろうか。多分、体力は限界に来るので、書くことや語る事くらいしかなくなるのである。
その時の為に、頭脳と精神を鍛えて、品格を持ち続け、最後まで他人様のお役に立てるよう生き、迷惑をかけずに逝けたら最高の人生ではないだろうか。つまり、品格は、最後の最後まで、人として生き、死んでいくための必需品ともいえるのである。
ゆとりの林住期、さとりの遊行期をより優雅に過ごされたければ、少しでも早くから「自分の品格」を育てて頂きたい。間違いなく、将来損はしない。