column

コラム

第194回

「安分守己(あんぶんしゅき)」

「2025年には世界中で何十億人ものマイクロアントレプレナーが活動しているだろう」と英国のビジネススクールの教授がおっしゃっている。

2027年には米国内の労働人口の過半数がフリーランスになると予測している米の統計もある。

そうでしょう、そうでしょう。

人口が増え寿命が延び続ける中、地球の怒りが収まるまでに起こるあらゆる災害や事変が、社会の仕組みを根底から変えていくのだから、環境の変化に対応するべくスモールビジネスで生きるマイクロアントレプレナーやフリーランスが増えていくのは仕方がない。なにしろ、企業が永遠に続くことも、雇用が生涯保障されることも無いのだ。

思えばインキュベーションをビジネスシステムと捉えた言語として知った時から、マイクロアントレプレナーが増えるというイメージは持っていた。当時はマイクロとは付けなかったが。

もちろん、日本にもGAFAMのような巨大企業となる起業家が生まれて欲しいが、日本独自の企業体の在り方で、幸福な会社が増えて欲しいとも思っている。

小さくてもいい、幸せならばである。

「安分守己(あんぶんしゅき)」

スモールビジネスというと、一人親方というイメージを持つ方もいらっしゃるが、一人親方は限られた業種の技能集団を束ねる個人事業主を指す名称である。

フリーランスは、自分のスキルを活かして仕事を請け負う個人事業主である。スモールビジネスの代表者は、一人で業務全般をこなしながらも法人として登記し、必要な機能は保持している。

一般企業との違いは、社員の人数と準ずる諸経費の違いがあるだけだ。それに、一人でも、毎年高収益を上げている会社は珍しくない。

そうはいっても、誰彼と簡単に利益が上がるわけではなく、誰でもやればできるものでもない。なので、一時の気の迷いや、強引に勧められて等の起業は避けた方がいい。やはり、自分でやりたいことがある、自分流の働き方がしたい等、明確な意思がないと続かないし、迷いや勧誘は、失敗を他人のせいにするというお粗末な結果になる。

また、将来のイメージも大切だ、優位性のあるビジネスモデルで拡大成長を狙うなら、スモールビジネスではなく、事業計画に賛同する仲間とあらかじめ資本政策も練った上で始める事を

お勧めする。

拡大成長より、自分流の仕事で人生を送りたいという方は、スモールビジネス向きだ。

それにしても、最近はスモールという言葉が目立っている。

スモールイズビューティフルという仏教経済学を取り上げた方の本も再ブームである。

仏教経済学とは、仏教の教えに基づき、もっと人間を大事にする経済の在り方で、要するに、これまでの資本主義社会の成れの果てが地球温暖化に結び付いたのだから、それぞれが、身の丈にあった生活で、思いやりを持って経済をまわすべきという論。だと、いつものように勝手に思っているが、確かにこのまま資本家の利益の為に、自然破壊が続くやり方は人類の為にならないのは解る。

そもそも経済、つまり経世済民は、仏教用語だ。

人を救ってなんぼという本分に立ち返れという事ではないだろうか。

だから、これからは、安分守己なのである。

つまり、必要以上の拡大等求めずに、適正な限度を保つ強さを持つことだ。

「安分守己(あんぶんしゅき)」

スモールビジネスを長く続ける秘訣は、自分のできる事を自覚し、それを自分の強みとして磨きながら信頼できる仲間や相談相手を大事にすることだ。そして、スモールビジネスで、独立される場合にもう一つ大事な事も、この安分守己である。

相談相手といえば、インキュベーション施設を利用するのも一つである。今や、デジタル社会に沿ったインキュベーション施設も定着してきている。

人は、一人で考えるより、誰かに話を聞いてもらったほうがいい時もあるし、違う業界の知人は、新たな発見や自己の啓蒙につながる。

コロナ禍の後、新たな社会生活の始まりで戸惑うこともあるかもしれないが、幸福でいるための方法の一つにスモールビジネスもあるという事を頭の隅に残して欲しい。

スモールも集まると、ビッグになるではないか。

コラムを毎月メルマガでご購読